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ロシアのウクライナ侵攻で核使用の現実味が増している。核を使用したとしても国際法上は違法ではなく、国連も使用を排除していない。核軍縮が専門の一橋大の秋山信将教授に、核軍縮の現実や日本が取るべき行動について聞いた。【聞き手・矢野純一】
核使用は違法ではない
――ロシアがウクライナで、核兵器の使用に言及しました。国際司法裁判所(ICJ)が1996年に、「国家の存亡がかかっているような究極な自衛状況」での使用について、絶対的に違法とはしないという勧告をだしています。ロシアもICJの勧告を念頭に置いたのか「国家の存亡に関わるような究極の状況」になれば核を使用すると発言しました。
◆専門家と一般の人の間にギャップがあるかもしれませんが、ロシアの核使用に関する発言は驚くことではありません。むしろ、問題なのは核使用の条件として言った「国家の存亡がかかっている極限の自衛状況」の解釈の幅です。
ロシアが国家の存亡をどのように定義しているのかわかりません。ロシアは、ウクライナのブチャでの虐殺など、常識や国際的な規範体系の中で、やってはいけないことを平気でやっています。核兵器使用に関してロシアは勝手に自己解釈して、我々が考えるよりも低いハードルを設定しているかもしれません。この発言によって、ウクライナでの戦争は核兵器の使用にリアリティーを持たせることになってしまいました。
――核兵器使用は違法ではないということですか?
◆核兵器使用を禁じる法は基本的にありません。核兵器禁止条約がありますが、非加盟国に対しては拘束力がありません。核拡散防止条約(NPT)は核禁条約よりもずっと多くの国が加盟して普遍性がありますが、インドやパキスタン、イスラエルは入っていません。そのため世界の大多数の国が加盟するNPTも、国際慣習法として定着していないことになります。残念ながら限界があります。
核使用の脅しは核抑止論を後押し?
――ロシアが核使用について言及して以降、核の存在を肯定的に捉える核抑止論が力を付けてきたように思いますが。
◆一定程度、核使用が抑止されたと思います。ロシア側から見れば、核を持っていたため核抑止力が効いて、米国が直接的な介入をしなかったと感じていると思います。だから、核を持っていて良かったと思っているでしょう。
一方で、米国が核を保有していたため、ロシアの核使用は抑止されたという一面もあると思います。米国はロシア側の発言後、ルーマニア空…
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