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日朝首脳会談から17日で20年。拉致問題は今も解決にはいたらず、02年当時のうねるような世論の盛り上がりもなくなったように見える。会談をきっかけに24年ぶりに故郷の土を踏んだ新潟県柏崎市の蓮池薫さん(64)は、こうした現状に危機感を抱く。帰国当初は講演する機会が多くなかったが、近年は壇上に立って強い口調で解決を訴えることが増えた。「拉致家族の再会が実現しなければ何も解決しない」。政治家や世論との拉致に対する温度差があるなか、蓮池さんは今も訴え続けている。
帰国後、柏崎市役所で臨時職員として働き始めた蓮池さん。仕事の合間に講演することはあったが頻度は「ポツポツという感じ」。帰国者の発言は日朝交渉に影響を及ぼすという懸念もあり、講演内容も「親元を離れた子どもとの絆や家族の情の話」など軟らかいテーマが大半だった。メディアへの取材にも慎重な姿勢を崩さなかった。
しかし、未帰国者の救出が進まないまま時が過ぎるにつれて考えは変わり、解決を求める気持ちが高まっていった。それは、拉致被害者として帰国を果たした自分にとって当然のことのように思えた。「何とかして事態を動かしたい。そのための議論の土台を提供したい」。蓮池さんは講演の頻度を増やし、依頼があれば各地を訪れるようになった。
こうした思いは、政府対応への不満もあって一層強くなった。横田めぐみさん(行方不明時13歳)の父滋さんや有本恵子さん(同23歳)の母嘉代子さんら拉致被害者家族が亡くなるたび、政治家は「断腸の思い」といったコメントを出す。そうした彼らの言葉に、蓮池さんはむなしさと憤りを感じた。「解決できなければ担当大臣を代えるなり給与を返納するなり、責任の取り方を示すべきではないか」
講演では、家族の話はあまりしなくなり、拉致問題の悲惨さや解決に向けた持論を伝えることが中心に変わった。「何のために講演しているのか…
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