エリザベス女王と安倍元首相の国葬 受け止め方の違い、どこから?

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エリザベス英女王=英南部メイデンヘッドで2022年7月15日、AP
エリザベス英女王=英南部メイデンヘッドで2022年7月15日、AP

 8日に死去したエリザベス英女王の「国葬」が19日午前11時(日本時間午後7時)、首都ロンドンで執り行われる。折しも27日には安倍晋三元首相の国葬が予定されており、改めて国葬の在り方が注目されている。国によってどんなルールで行われ、国葬になった人、ならなかった人は誰か。英国、米国、韓国の国葬事情を調べるとともに、反対が多い安倍元首相の国葬と、大きな反発は見えないエリザベス女王の国葬の受け止められ方の違いなどについて識者に聞いた。【大野友嘉子】

英サッチャー氏、自身の国葬「不適切」

 英国の国葬は法律ではなく慣習に基づいている。英下院図書館の資料によると、基本的に国王に限られるが、国王の命令やその資金を提供する議会の投票によって「例外的に著名な人物に(対象を)広げられる」としている。国王以外に国葬で送られた人には、チャーチル元英首相や科学者のニュートンなどがいる。

 過去には、国葬になりうる人物に生前、国葬を受けたいかどうか尋ねることがあったという。例えば、チャーチル元首相には1965年に亡くなる5年ほど前に、女王と当時の首相から亡くなった際には国葬を受けてほしいとの打診があったという。

 一方、国葬を望まなかった政治家も。19世紀のディズレーリ元首相は打診を断り、サッチャー元首相は自身の国葬について「適切ではない」と話していたという。

 国葬の費用は国が負担し、議会によって承認される。チャーチル元首相の国葬には4万8000ポンド(当時の約4838万円)かかったと報じられた。

 ちなみにサッチャー元首相は、国葬に準じる「儀礼葬」で送られた。国王以外の王室メンバーや首相経験者らは、この儀礼葬が行われることが多い。ダイアナ元皇太子妃や、エリザベス女王の夫のフィリップ殿下も同様だ。儀礼葬は、議会の承認の必要はない。

米国では軍が取り仕切る

 米国の国葬も法律ではなく慣習に基づいており、大統領や経験者、次期大統領らが国葬の対象だ。国葬を取り仕切る軍のホームページでは「国葬は、伝統的に国家元首のために設けられている国家からの賛辞」と表現している。

 国葬の期間は7~10日間で、首都ワシントンや故人が住んでいた州で儀式が行われる。ワシントンの連邦議会議事堂に遺体を納めたひつぎが安置され、国民の弔問を受け付ける。2018年に94歳で死去したブッシュ元米大統領(父)の国葬には、トランプ大統領(当時)や歴代大統領のほか、チャールズ英皇太子(当時)、福田康夫元首相ら約3000人が参列した。

 他方、ウォーターゲート事件で辞任に追い込まれたニクソン元米大統領は、生前から国葬は望まない考えを家族に伝えていた。94年に亡くなった際は、生まれ故郷のカリフォルニア州で葬儀が行われた。

韓国は「国葬」と「国民葬」統合

 国葬に関する法律があるのが韓国だ。大統領経験者などを対象とし、67年に制定された「国葬・国民葬に関する法律」で、国家が主催する「国葬」と、国家と遺族などが共催する「国民葬」を分類して定めた。費用については、国葬は全額を国費で負担するとし、国民葬は大統領らで構成する国務会議(閣議)の審議を経て、一部を国費で補助することになっていた。

 09年5月に死去した盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は国民葬だったが、ノーベル平和賞を受賞した金大中(キム・デジュン)元大統領が同年8月に亡くなると、金氏の支持勢力から「故人は世界的な評価を受けた人物であり、国葬とすべきだ」との声が上がり、韓国政府は金氏の葬儀を国葬にした。

 11年には、法改正して「国家葬」に統一し、全額国費負担とした。現地メディアによると、「国葬・国民葬に関する法律」は国葬と国民葬の対象を厳格に規定しておらず、「不必要な社会的確執を誘発しかねない」との指摘が出たことが、法改正の背景にあるという。

「本物の国葬」トレンド入り

 国によってルールや位置付けなどが異なる国葬。安倍元首相の国葬が閣議決定された7月下旬以降、日本では、国葬に明確な法的根拠がないことや、国会審議を経ずに閣議決定した手続きなどを疑問視する声が上がっている。エリザベス女王が9月8日に亡くなると、ツイッターでは安倍元首相の国葬への皮肉を込めた「本物の国葬」というワードがトレンド入りした。これに対して「葬儀は比べるものではない」などの反論もあった。

 「フランスの友として、自らの国と世紀を永遠に刻んだ心優しい女王として記憶にとどめます」。フランスのマクロン大統領は8日、エリザベス女王の死を受け、ツイッターで哀悼の意を示した。ドイツのショルツ首相も8日、ツイッターで「彼女の素晴らしいユーモアを恋しく思います」と女王の人柄に触れながらつづった。

 女王の国葬には、そのマクロン大統領、米国のバイデン大統領、ドイツのシュタインマイヤー大統領らが参列する見通しだ。日本からは天皇、皇后両陛下が参列される予定だ。エリザベス女王の影響力を物語る出席者だ。

 女王の求心力はどこから来たのか。英国政治に詳しい成蹊大法学部の高安健将(けんすけ)教授(比較政治)は、「女王には自国民のみならず、出会った人々に関心を持ち寄り添おうとする姿勢がありました。国と国を結びつけていく交流を徹底して示しました。例えば、65年のドイツ(当…

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