第12回毎日地球未来賞

第12回毎日地球未来賞 募集始まる

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熊本県立熊本農業高校養豚プロジェクトの生徒たち=同校提供 拡大
熊本県立熊本農業高校養豚プロジェクトの生徒たち=同校提供

食料・水・環境、つなごう 前回大賞、2団体紹介

 食料・水・環境の問題に取り組む市民団体や若者の活動を顕彰する「第12回毎日地球未来賞」(毎日新聞社主催、クボタ協賛)の募集が始まった。一般と学生(大学生以下)の2部門で毎日地球未来賞(大賞)とクボタ賞(準大賞)を選び、学生部門にはSDGs未来賞と奨励賞を設ける。締め切りは10月4日。昨年度大賞は、学生の部で熊本県立熊本農業高校(熊本市)の「養豚プロジェクト」が、一般の部でNPO法人「愛のまちエコ倶楽部」(滋賀県東近江市)が受賞した。活動に取り組む人たちへ、2団体にエールを寄せてもらった。

豚脂せっけんの試作品を紹介する今本天音さん 拡大
豚脂せっけんの試作品を紹介する今本天音さん

食品廃棄物飼料、せっけんも 熊本県立熊本農業高校「養豚プロジェクト」(熊本市)

 熊本県立熊本農業高校が食品廃棄物を活用した飼料(エコフィード)だけで豚を育てる事業を始めたのは2017年。食品事業者から期限切れのパンや品質基準に満たない穀物などを受け入れるようになった。地元企業16社から回収したのは2年半で約250トン。企業側は計1200万円以上の処分経費を節約できた。今回の受賞を機に原料の提供を申し出る企業は増え、県内の自治体から災害の備蓄米なども寄せられている。

 気候変動による不作やロシアのウクライナ侵攻などの世界情勢を背景に、家畜飼料はここ1年間で1トン当たり2万1000円値上がりした。1頭当たりの飼料は市販の場合2万3400円程度かかるが、エコフィードだけで育てれば762円。原料の配合を工夫し肉質を保ちながらコストを削減するのが目標の一つだ。

 20年から新たな試みを始めた。同校は毎年160頭近くを出荷するが、精肉加工実習で1頭約8キロの豚脂を捨てていた。これを衣類用せっけんにしようと試作を重ねた。県産業技術センターに調べてもらうと、植物性より洗浄力が高く、皮膚への刺激も少なかった。クリーニング店からは「襟汚れがきれいに落ちた」と評価を受け、1個200円で売り出すことになった。次は人が手指や体を洗うためのせっけん作りだ。

 受賞報告会で各地の活動を聞き、刺激を受けたという。一般の部大賞の「愛のまちエコ倶楽部」は、菜種油から廃食油の回収・再利用へつながる活動を40年かけて発展させた。同校のプロジェクト代表、今本天音さん(18)は「私たちも活動の歴史を築いていきたい」と話す。そして、環境活動に取り組む若者たちに「活動を通して小さな取り組みでも続けることが大切だと学びました。高校生だからできることがある。一緒に頑張りましょう」と呼びかける。

菜の花畑で菜種油を手にする「愛のまちエコ俱楽部」のメンバーたち=同俱楽部提供 拡大
菜の花畑で菜種油を手にする「愛のまちエコ俱楽部」のメンバーたち=同俱楽部提供

廃油を再利用、循環型地域づくり NPO法人 愛のまちエコ倶楽部(滋賀県東近江市)

 NPO法人「愛のまちエコ倶楽部」は、活動拠点の「あいとうエコプラザ菜の花館」で回収した廃食油からせっけんやバイオディーゼル燃料を製造する「菜の花エコプロジェクト」に取り組んでいる。転作田で育てた菜種で食用油を搾り、油かすは肥料にして茶や野菜などの農業に活用される。就農・移住支援や農業体験などの農村活性化事業も展開中だ。

 受賞は地域住民にも報告され、活動を活気づけた。エコ倶楽部の藤澤加奈子さんは「地域の人たちが主体となって、長年続けてきた活動が認められたとみんなで喜んでいます」と笑顔を見せる。

 「地球未来賞への応募は、活動の価値を仲間と再確認するきっかけになる。ぜひ、トライしてほしい」。藤澤さんはこう呼び掛けている。

=梅田麻衣子撮影 拡大
=梅田麻衣子撮影

若い力にさらに期待 クボタ・木村一尋専務

 毎日地球未来賞に協賛するクボタの木村一尋専務執行役員に思いを聞いた。【聞き手・久田宏】

 ――毎日地球未来賞を応援しているのは、どのような思いからですか。

 ◆クボタは食料・水・環境を事業分野にしており、美しい地球環境を守りながら、人々の豊かな暮らしを支えていくことが我々の使命だと思っています。これは毎日地球未来賞の趣旨とも重なるので、前身の毎日国際交流賞から協賛を続けています。これからは地域やコミュニティーの存在が非常に重要になってくるでしょう。受賞する個人や団体が続けてきた草の根の活動は、クボタがブランドステートメントにしている「For Earth, For Life」と同じだと思っています。

 ――環境問題にはどのように取り組んでいますか。

 ◆最近の企業経営は、ESG(環境、社会、ガバナンスの英語の頭文字)に配慮する考え方が主流になっています。クボタは事業の中で環境に関わっており、環境に配慮した製品を作っていこうと常に意識しています。社内では昨年、KESG経営戦略会議(Kはクボタの頭文字)を設置して、これまで以上にESGに取り組んでいこうとしています。

 難しいところもあります。例えば、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルについては、企業が事業の中で徹底すると業績が落ち込むこともあるでしょう。解はなかなか見付かりませんが、そのバランスをどう取っていくかは社内で真剣に議論をしています。

 ――今回の毎日地球未来賞では「学生の部」を更に拡充します。

 ◆受賞団体の活動報告会では、若い人、特に高校生のプレゼンテーションの力やそこから伝わる思いをひしひしと感じます。活動を通じて身に付いた意識は、学校を卒業しても変わるとは思えません。社会に出てからも活動が更に広がっていくという面で、若い人への期待は大きいです。

 前回の受賞団体で特に印象深かったのは、養豚に関する二つの高校の取り組みでした。いずれも食品廃棄物を飼料として循環させながら、地域の企業や社会をうまく巻き込んでいる点に感心しました。


前回の受賞者一覧

 <一般の部>

 毎日地球未来賞

 NPO法人愛のまちエコ倶楽部(滋賀県東近江市)

 クボタ賞

 公益財団法人 山本能楽堂(大阪市)

 SDGs未来賞

 岡山市京山地区ESD・SDGs推進協議会(岡山市)

 <学生の部>

 毎日地球未来賞

 熊本県立熊本農業高校「養豚プロジェクト」(熊本市)

 クボタ賞

 大阪府立園芸高校ビオトープ部(大阪府池田市)

 SDGs未来賞

 早稲田大学本庄高等学院河川研究班(埼玉県本庄市)

 奨励賞

 静岡県立浜松城北工業高校環境部(浜松市)

 三重県立明野高校あかりのプロジェクト(三重県伊勢市)

 大阪府立堺工科高校定時制の課程(堺市)

 大阪府立農芸高校酪農専攻Love and Beef(堺市)

 西宮市立山口中学校モリアオガエル保存会(兵庫県西宮市)


 ◆募集要項

対象

 食料・水・環境の3分野で国内外の問題解決に取り組んでいる市民団体や個人、学生のグループを募集・顕彰します。3分野の活動で、特に「持続可能な開発目標」(SDGs)の趣旨に合致するもの、地震や集中豪雨など自然災害の被災者・被災地に対するものも授賞対象です。「一般の部」と「学生の部」(大学生以下)に分けて募集・顕彰。特に若い人たちへの将来性に期待して、学生の部にはSDGs未来賞、奨励賞を設けます。

賞・発表

 毎日地球未来賞各1点=賞金100万円、50万円▽クボタ賞各1点=同60万円、30万円▽SDGs未来賞(学生の部のみ)3点=同20万円▽奨励賞(学生の部のみ)5点以内=同10万円。賞金額は「一般の部」「学生の部」の順。2023年1月の毎日新聞紙上で発表。

選考委員

 <委員長>焼家直絵=国連世界食糧計画日本事務所代表<委員>蟹江憲史=慶応大大学院教授▽清水国明=タレント▽露木志奈=環境活動家▽木村一尋=クボタ専務執行役員▽小松浩=毎日新聞社論説特別顧問(敬称略)

応募方法

 応募・推薦用紙は毎日新聞社ホームページの同賞サイト(https://www.mainichi.co.jp/event/aw/chikyumirai/)から入手。または事務局に電話(06・6346・8407、平日10~18時)を。郵送します。

 ※過去受賞者の応募には条件があります。詳しくはサイトをご覧ください。

応募先

 メールchikyumirai@mainichi.co.jp▽郵送〒530-8251(住所不要)毎日新聞社事業部毎日地球未来賞係

締め切り

 10月4日(火)

主催 毎日新聞社

後援 内閣府政策統括官(防災担当)、外務省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省

協賛 株式会社クボタ


 第11回毎日地球未来賞の受賞記念活動報告会の動画をアーカイブ配信しています。左のQRコードかURL(https://youtu.be/4drIst9-ozQ)からご覧ください。

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