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「日本がお亡くなりに」――。1991年に初演された鈴木忠志の代表作の一つ、野外劇「世界の果てからこんにちはⅠ」のセリフが、今また切実に響いた。今年のSCOTサマー・シーズン(8月26日~9月11日、富山・利賀芸術公園)。82年の第1回利賀フェスティバルから数えて40周年となる。
「果てこん」は、大きな果実だ。コロナ下で社会は疲弊し、分断が進む。政治不信も募る。さらに戦争や異常気象による自然災害が人間の安全保障を脅かす。諧謔(かいぎゃく)やメタファーに富む作品の高い批評性と、打ち上げ花火の物語性が絡み合い、社会や人間のありようを問う。利賀の自然の中でしか味わえない感覚に改めて酔いしれた。
ギリシャ悲劇がベースの「エレクトラ」(ソフォクレス、ホーフマンスタール原作、鈴木構成・演出)は日本・インドネシア2カ国語版も上演されたが、最終日のSCOT版を見た。高田みどりの打楽器の生演奏と共振する、クリテムネストラの内藤千恵子、エレクトラの佐藤ジョンソンあきら狂気を帯びた俳優の身体が、観客を陶然とさせる。合掌造りを利用した新利賀山房という劇場空間がまた、洋の東西、伝統と現代の結節に一役買う。
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