県議提案の条例、質疑なく21件採決 提出期限の無視が常態化 茨城

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1日に開会した県議会9月定例会=水戸市笠原町で2022年9月1日、森永亨撮影 拡大
1日に開会した県議会9月定例会=水戸市笠原町で2022年9月1日、森永亨撮影

 茨城県議会で議員提案により成立した政策条例22件ほぼ全てで、議会での実質的な議論を経ることなく採決されていたことが、毎日新聞のまとめで判明した。県議会事務局によると、議員提案されるようになった2005年3月以降に成立した22件のうち、内容を具体的に議論する常任委員会に付託されたのは1件のみ。残りは本会議で質疑が行われることもなく成立した。公の場で内容を巡る議論が深まらない現状に、内外から疑問の声が上がっている。【長屋美乃里、宮崎隆】

 県議会事務局によると、茨城県議会での政策条例は、05年3月定例会で「県屋外広告物条例の一部を改正する条例案」が提出されて以来、計22条例が成立している。提出議員は一部で旧民主、公明、共産など会派をまたぐケースもあるものの、いずれも最大会派の自民系議員が中心となっている。

 しかし全22件のうち、常任委員会に付託されたのは、07年12月の「いばらきの快適な社会づくり基本条例」のみ。20件は閉会日に提出され、議場での質疑なしに即日採決。残る1件も閉会1週間前に提出され、委員会への付託も議場での質疑もなかった。

 委員会に付託するためには条例案を会期の早い時期に提出し、議会運営委員会で扱いを決める必要がある。議員提案を巡っては、「一般質問終了日の前日正午までに議長に提出する」ことで各会派で申し合わせているにもかかわらず、付託されなかった21件はいずれも一般質問の終了後に議長に提出。議会への上程はさらに遅れ、議場での本格的な議論をされずに終わった。申し合わせでは、提出期限の例外は緊急時などに限るとしていたが、無視した取り扱いが常態化していたことになる。

 政策条例は市民生活と深く関わり、近年も「ヤングケアラー支援条例」(21年12月)、「犯罪被害者支援条例」(22年3月)などが成立している。それにもかかわらず、議論が深まらない現状について、議会内にも問題視する声がある。

 21年5月に行われた県議会改革推進会議の記録では、野党系議員からの「議論の過程が議事録にも残らず、この条例がなぜ必要か議論できる場を設けてほしい」との要望に対し、与党会派からの反応はなし。県議会事務局長が「定例会の最終日に提案され、直ちに採決される状況」と答えたのみだった。

 元東京都職員で地方自治に詳しい中央大学の佐々木信夫名誉教授(行政学)は地方議会の条例制定の流れについて、「議会初日に本会議に提案し、委員会で審議した結論を本会議に報告。各会派の質疑を経て採決するもの」と説明する。最終日の提案と即日採決が常態化する茨城県議会の現状を、「議会そのものの価値を失わせる。議会は決定機関であり、審議機関であるという認識が欠けている」と厳しく批判する。

 自民県連政務調査会長の石井邦一県議は取材に「パブリックコメントを実施したり、市町村の意見聴取や他党との調整をしたりしながら、さまざまな面で協議はしており、門は開いている」と述べた。

政策条例

 議員提案条例のうち、定数や報酬といった議員の身分などに関するものを除いた一般政策に関する条例。2000年の地方分権一括法施行で、地方独自の政策が求められるようになったことなどを背景に、都道府県など地方議会で活発に提案されるようになった。

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