mRNAワクチン、今年こそノーベル賞? 評価分かれる点も
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2022年のノーベル医学生理学賞が10月3日、発表される。昨年に続いて今年も注目されているのが、新型コロナウイルスのワクチンの迅速な開発につながった「メッセンジャー(m)RNA」の研究だ。ただ、その業績は評価の分かれる部分もあるという。さて、賞の行方は――。
炎症反応を克服
米製薬大手ファイザーや米モデルナのワクチンにはmRNAが使われている。mRNAには、遺伝子の情報をコピーして運ぶ役割がある。生物の体内では、mRNAが持つ情報を基に、体に必要なたんぱく質が合成される。新型コロナもmRNAを持ち、感染者の細胞内で増殖する上で重要な役割を果たす。
新型コロナの「mRNAワクチン」には、ウイルスの表面にある「スパイクたんぱく質」を作らせる遺伝情報が組み込まれている。接種により体内に入ると、人の免疫はこのスパイクたんぱく質を目印として覚え、ウイルスそのものが侵入してきた時に「敵」だと認識できるようになる。その結果、効率的にウイルスを攻撃し、感染や発症、重症化を抑えることができる。
体内で、目的のたんぱく質を人為的に合成して病気の予防や治療につなげるという概念は、1990年代からあった。だが、人工的なmRNAは体に入ると異物とみなされて免疫から攻撃され、強い炎症が起きるという課題があった。
これを解決したのが、独バイオ企業ビオンテックのカタリン・カリコ上級副社長と米ペンシルベニア大のドリュー・ワイスマン教授だ。
05年、mRNAを構成する物質の一つ「ウリジン」を、化学的な構造が部分的に異なる「シュード(疑似)ウリジン」に置き換えると、炎症反応が起きにくいことを突き止めた。これにより、効率よく細胞内に送り込むことができるようになり、この研究を大きく飛躍させた。
先駆的な仕事
mRNAなどを用いる核酸医薬に詳しい位高啓史(いたかけいじ)・東京医科歯科大教授は、カリコさんらの研究業績をこう解説する。
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