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指揮者の小澤征爾さん(87)が総監督を務める長野県松本市の音楽祭「セイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)」が3年ぶりに開かれた。国内外の音楽家たちが集結する祭典は今年で30周年。地域に根付いただけでなく、いまや若い音楽家にとって憧れの地にもなった。節目を迎えたOMFに、小澤さんや関係者はどんな思いを抱いているのか。世代の異なる2人がタクトを振ったオペラとオーケストラコンサートを通じてリポートする。【須藤唯哉】
夏の松本は、町を挙げて音楽ファンを歓迎する。JR松本駅を降りると、OMFの青い旗が目抜き通りをはじめ、至るところで風になびいていた。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、OMFはこの2年間、中止を余儀なくされただけに、今年の開催を心待ちにしていた人々は少なくない。
OMFの前身は1992年に始まった「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」で、2015年に現在の名称になった。30周年という記念すべき年に合わせて、小澤さんが寄せたメッセージを、少し長くなるが全文、紹介したい。大好きな米大リーグのボストンレッドソックスの本拠地と、松本を重ねているところに、小澤さんらしさがにじみ出ている。
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<僕の夢であったSKOとのフェスティバルを松本市と長野県が受け入れてくれたという大きな喜びと、SKOは僕のライフワークであり、フェスティバルの最初の一歩を、なんとしても大成功させなくてはという責任とで、1992年の開幕時は本当に緊張しました。
それに加えて、ジェシー・ノーマンをはじめとする当代随一の歌手たちが来てくれて、これまた想像を超えた見たことないようなプロダクションで、『エディプス王』のリハーサルを始めた時『これは大変なことが起きているな』と、身震いするほどの重圧を感じたことを今でもよく覚えています。
そうやって始まったフェスティバルも、今年30周年を迎える事ができました。松本のフェスティバルを支えてくれている皆さん、SKOのメンバーみんなにこころから感謝です。
ぼくは大の野球ファンで、ボストン交響楽団音楽監督時代の前の61年から、そしてもちろん今でも、アメリカ最古の球場である素晴らしいフェンウェイパークを本拠地とする、ボストンレッドソックスを応援しています。
SKOの本拠地である松本のフェスティバルも、そうやって皆さんに愛され、これからの人たちに引き継がれていって欲しい、とくにSKOメンバーに引っ張っていって欲しい、と願っています。>
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OMFの成功に心血を注いできた小澤さんの思いは結実し、夏の音楽の祭典は松本の風物詩となった。…
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