新幹線ができて「不便」になる日本の鉄道の謎 原武史さん

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放送大の原武史教授=東京都千代田区で2020年1月17日、佐々木順一撮影
放送大の原武史教授=東京都千代田区で2020年1月17日、佐々木順一撮影

 東京や関西の通勤電車と新幹線以外、鉄道のない日本になるのか――。国土交通省の有識者検討会が7月、ローカル線に関する提言をまとめました。政府主導で自治体などの協議会を設置し、鉄道存続かバスなどへの切り替えかなどを検討するよう求めています。JR各社も赤字路線の区間別収支を発表するなど、ローカル線への向かい風は強まるばかり。本当にこれでいいの? 鉄道の歴史に詳しい政治思想史研究者、原武史放送大教授に聞きました。【聞き手・鈴木英生】

函館本線で楽しむ、啄木が見た風景

 先日、JR北海道の函館本線、長万部-札幌間に乗車した。北海道新幹線の延伸に伴い2030年度で廃止されると事実上決まった同線長万部-小樽間(140・2キロ)が、今どうなっているかを確かめるためだ。

 乗って驚いた。1両編成のディーゼルカーは席が埋まり、立っている客もいたからだ。

 同線は1905年に全通した北海道最古の主要幹線で、長万部―小樽間は当時のままの非電化単線だ。架線柱がなく複線でもないから、両側の線路際までシラカバやエゾマツの林が迫り、森林浴をしながら乗る格好になる。かつて乗った石川啄木や小林多喜二、詩人の左川ちかが記した北の大地の自然が車窓に広がる。自動車では、道路沿いが開発されてしまって、こんな体験はできない。

 車内には鉄道マニアのほか、一般の観光客や地域住民も乗っていたが、車両は座席が少なく、車窓の風景を見やすいよう設計されているわけでもなかった。長万部からは1日に4本しか列車がない。

 少子高齢化がもっと進めば、ゆったり時間をかけて車窓の風景を楽しめる鉄道の魅力はますます増すに違いない。

 水際対策が緩和されて入国制限が撤廃されれば、割安感からコロナ禍の前より外国人観光客が増える可能性がある。円安が持続すれば、海外旅行から国内旅行に切り替える客も増える。ローカル線を生かす好機になるのではないか。車両や本数を増やしたり、魅力のある車両を走らせたりすれば、まだまだ乗客を見込めると思った。

欧州では温暖化対策で再評価

 ところが、である。…

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