特集

安倍晋三元首相銃撃

2022年7月8日、演説中の安倍元首相が銃撃され、死亡しました。その後の「国葬」にも疑念が…。

特集一覧

「政治家の国葬、現代で成立せぬと実証」 研究者が見た安倍氏国葬

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
多くの参列者が集まった安倍晋三元首相の国葬会場=東京都千代田区の日本武道館で2022年9月27日午後1時33分、宮武祐希撮影
多くの参列者が集まった安倍晋三元首相の国葬会場=東京都千代田区の日本武道館で2022年9月27日午後1時33分、宮武祐希撮影

 安倍晋三元首相の国葬が27日、国民の世論が二分される中で行われた。吉田茂元首相以来、55年ぶりの戦後2例目の国葬。国葬について研究してきた宮間純一・中央大文学部教授(日本近代史)は「国葬の体をなしておらず、政治的にも何も生まなかった。政治家の国葬は現代では成立しないことが実証されたのではないか」と総括する。【山下智恵】

「国葬の体をなしていない」

 「日本史上、ここまで批判が噴出する中で行われた国葬はありません。吉田国葬の際も反対意見はありましたが、弔意の要請や各地で黙とうがあり、まだ国葬らしかった。今回、反対世論を考慮し、岸田文雄政権は弔意表明の要請を出せず、国を挙げてという形が取れなかった。国葬の体をなしていないばかりか、結果として国民に分断と緊張状態だけを生みました」

 公文書などを基に、明治政府による国葬の起源や運用の歴史を研究してきた宮間さんは、国葬を国民の一体感を醸成するための“文化装置”であると分析。今回の国葬について、法整備や国会での議論がないまま復活させることに警鐘を鳴らしてきた。

 国葬は戦前、1926年に勅令である国葬令で、天皇や皇后などの他、天皇や国家に尽くした“功臣”を国家全体で悼むことで「天皇の下に国民を統合する装置」となったと説明。戦時中に行われた、連合艦隊司令長官の山本五十六(43年戦死)の国葬が象徴的で、戦意高揚と反対意見の排除の役割を担うなどした経緯があるという。

 今回の国葬について、政府は「敬意と弔意を国全体で示す儀式」(岸田首相)として開催するはずだったが、明確な法的根拠がないこと、国会審議を経ずに閣議決定したことで批判が増大。結果として、世論の反発を考慮し、中央省庁への弔旗掲揚などを求める閣議了解や、国民の弔意表明の協力要請などは見送らざるを得なかった。

 「弔意の要請ができなければ、国を挙げてという形は整いません。国葬にこだわるのであれば、政府は責任を持って、その後の批判も受ける覚悟で弔意を要請しなければ国葬の趣旨からしてもおかしい。できないならば国葬という形は取り下げるべきでした」

 宮間さんは、政策としての国葬の効果にも疑問を投げかける。「国葬は被葬者のためではなく主催する側が政治的意図を持って利用してきました。今回の政治的目的が何か具体的には分かりませんが、自民党政権が自らの功績を賛美するために利用したようにしか見えません。しかし、結果として内閣支持率は下がり続け、国民世論の分断を招き、外国メディアを通じて世界へも良い印象を与えていません。政治的意図のある政策として見ても、何を生み出したのか疑問です」

歴代の慎重判断崩し 岸田政権は失敗

 国葬の形も整わず、政策としても成果がなかったという今回の国葬。宮間さんは「67年の吉田元首相の国葬以降、なぜ国葬がなかったのでしょうか。…

この記事は有料記事です。

残り1367文字(全文2542文字)

【安倍晋三元首相銃撃】

時系列で見る

関連記事

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集