宮古島に中国の海洋進出の影 「防衛力強化ばかり」複雑な心境も

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新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2019年、クルーズ船で訪れた中国人観光客でにぎわう沖縄県宮古島市のビーチ=宮古島市提供
新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2019年、クルーズ船で訪れた中国人観光客でにぎわう沖縄県宮古島市のビーチ=宮古島市提供

 沖縄本島と台湾のちょうど中間地点に位置し、温暖な気候で移住先としても人気が高い宮古島。南国ののどかな島の生活に、中国の海洋進出の影が差しつつある。

 「尖閣まで行けば中国の公船がいるのは当たり前。行くのに燃料を使う分、魚をたくさん取らなきゃいけないが、邪魔されるのが目に見えているからあえて行くことはない」

 漁師歴20年以上の60代の男性は3、4年ほど前から、沖縄県・尖閣諸島の周辺に出漁しなくなった。男性の漁場だった尖閣諸島・大正島周辺は宮古島の北西約130キロと遠い漁場だが、季節に関係なく高級魚のハマダイなどがよく取れる。かつては宮古島の漁師も足しげく通う漁場だった。

 2012年の尖閣国有化以降、中国公船が島周辺で日本漁船を監視したり、領海内まで追尾したりする事案が多発した。男性も自分の漁船から2キロほどの距離を保ちながら航行する公船を何度も目にしたことがある。

 19年、尖閣周辺の接続水域(領海の外側約22キロ)で公船の活動が確認された日数は282日に上り、18年の159日から急増した。その後も高止まりしている。船の大型化や操船技術の向上で、領海内に侵入する時間も長くなり、今年7月には連続侵入時間が過去最長の64時間超に達した。

 尖閣を「固有の領土」と主張する中国側には、公船活動の常態化で領有権をアピールする狙いがあるとされ、外務省幹部は「脅威は徐々に大きくなっている」と神経をとがらせる。男性は「尖閣はそう遠くない将来、乗っ取られると思う。本当に台湾有事が起きたら同時にやられるよ」と語った。

 中国の脅威を感じるのは漁師に限らない。

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