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日中50年・現場から

日中国交正常化から50年。半世紀で双方の交流は飛躍的に増えたが、摩擦も尽きません。日中関係が映し出された現場を追います。

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与那国島、実感する「有事」(その1)

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中国軍の弾道ミサイル落下について振り返る漁師の小針幸太郎さん=沖縄県与那国町の久部良漁港で21日、川口峻撮影
中国軍の弾道ミサイル落下について振り返る漁師の小針幸太郎さん=沖縄県与那国町の久部良漁港で21日、川口峻撮影

 「何があったんだ?」

 8月5日午前8時ごろ、沖縄県・与那国島の漁師、小針幸太郎さん(60)が漁船を操縦しながらスマートフォンを見ると、着信履歴で画面が埋まっていた。4日午後2時ごろ、母港の久部良漁港を出発し、電波の圏外となる海域で夜間にマグロ漁をした帰りだった。

 4日午後3~5時ごろ、与那国島の西約110キロに位置する台湾の周辺はにわかに軍事的な緊張が高まった。中国軍が演習でミサイル11発を発射し、うち5発が与那国島南方約120キロ地点など日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。同日夜に報道され、安否を気遣う漁師仲間や漁協から着信が殺到したのだ。

 小針さんは久部良漁港に戻った後に事情を知り、驚きとともに怒りがこみ上げてきた。「こっちは生活がかかっている。EEZにミサイルを落とすなんて本当に迷惑な話だ」。与那国町漁協は急きょ、沖合の操業自粛を余儀なくされた。自粛期間は5日から8日まで続き、旧盆を控えて需要が高まっていたハマダイやカジキの漁を直撃した。

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