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「ベルばら」初代オスカル 「最後の覚悟」で明治の男を選んだ理由

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オープンカーの運転席でポーズを決める榛名由梨。宝塚歌劇団に入って2年目の頃に撮影したカット=本人提供
オープンカーの運転席でポーズを決める榛名由梨。宝塚歌劇団に入って2年目の頃に撮影したカット=本人提供

 りんとした瞳で前を見据え、スポーツカーでポーズを決めるこの女性――。後に日本の演劇史に残るヒット作「ベルサイユのばら」で初代オスカルを演じることになる。元宝塚歌劇団トップスターの榛名由梨、その人である。

 舞台生活60年を記念し、今秋、喜寿にして舞台に立つ。演じるのは「無法松の一生」で知られる明治の荒くれ者、松五郎。40年前の初演時に「宝塚化は冒険」といわれた作品だ。

 「これが最後の主演舞台という覚悟」で臨む榛名は、なぜ松五郎を選んだのか。

 この役に出合うまで、数々のドラマがある。優等生の「殻」を破れなかった下積み時代、念願のトップスターに就く頃に直面した私生活での「別れ」、男役の深みを知った作品との出合い――。芸を極めた60年の歩みに迫る。

<全3回。次回は10月9日に掲載します>

「体はボロボロ」 77歳で主演舞台に

 稽古(けいこ)場は心地よい緊張感に満ちていた。「今日からおいは、永遠に吉岡家の番犬を務めますたい」。9月下旬、兵庫・宝塚にある宝塚文化創造館。和服姿の榛名がアルトの声でセリフを発すると、土臭い男の像が浮かび上がる。

 「ベルサイユのばら」の初代オスカルと聞けば、足跡のすごみが伝わるかもしれない。「あかねさす紫の花」の中大兄皇子、「風と共に去りぬ」のレット・バトラー。25年在籍した宝塚歌劇団の歴史を飾る名作で「初代」を演じた。

 77歳で、男役に再び挑む。「無法松の一生」を宝塚がミュージカル化した「永遠(とわ)物語」。演じる九州・小倉の人力車夫、松五郎は、軍人の夫と死別した吉岡夫人とその息子敏雄にいちずな愛を注ぐ役どころだ。

 「もう体はボロボロ。限界の『玄界灘』や。荒波にもまれて沈んでしまうんちゃうか」。だじゃれを交えて豪快に笑うが、半分は本音だ。長年酷使した股関節にはチタンが入り、ひざにもテーピングをしている。年明けには不整脈の手術をした。

 それでも、和太鼓をたたき、人力車を引き、敏雄役をおんぶするこの役に挑むのは理由がある。

「ショーちゃんだからできる作…

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