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盤寿の名人戦

将棋盤が9×9の升目であることから81歳を「盤寿」として祝う将棋界。80期を数える名人戦に挑んだ棋士が振り返ります。

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盤寿の名人戦

奇策にも冷静さ保った佐藤康光九段 「緻密流」に力強さ加わり防衛果たす

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インタビューに答える佐藤康光九段=東京都渋谷区で2022年9月16日、内藤絵美撮影
インタビューに答える佐藤康光九段=東京都渋谷区で2022年9月16日、内藤絵美撮影

 名人2期などタイトル通算13期、今もA級棋士として一線で活躍する佐藤康光九段(53)。「名人を取って、より自信を持って指せるようになった」。名人戦七番勝負に3度出場した佐藤は、名人獲得が自身の将棋人生の大きな支えとなっているという。佐藤にとっての名人とは。名人への思いや今後の目標を語る。【武内亮】

 現在、日本将棋連盟会長を務める佐藤のプロ入りは17歳の時。24歳で初のタイトルとなる竜王を獲得し、一流棋士の仲間入りを果たす。その後、第55期順位戦でA級に昇級。在籍2期目の第56期順位戦で羽生善治九段(52)とのプレーオフを制して名人挑戦権を獲得した。その時、28歳。相手は、すでに名人5期で永世名人の資格を持っていた谷川浩司十七世名人(60)だった。「竜王を1期で失い、(次の)タイトル獲得は30歳を過ぎてからかなと思っていたので、挑戦できたのは意外でした」

 シリーズは第6局まですべて先手番が勝ち、3勝3敗のタイで最終第7局を迎える。振り駒の結果、谷川が先手番となるが、谷川の戦法はこのシリーズでたびたび採用していた角換わりでなく矢倉だった。意表をつかれた形となったが、佐藤は冷静だった。「谷川先生の中に角換わりばかりで勝っても、という意識があったのかもしれません」。終盤、リードしていた谷川に失着が出て佐藤が逆転し、初挑戦で名人を獲得する。「うれしかったですが、複数タイトルを持っている棋士もいたので、第一人者になったという感覚はなかったですね」

 初防衛を目指して臨んだ第57期名人戦は、今の佐藤のスタイルを確立するようなシリーズとなる。挑戦者は雪辱を期す谷川。第1局から、…

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