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残された「謎」の一文/手掛かり回収に脱帽=西上心太

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 シーズンが大詰めの今の時期にぴったりの野球ミステリーが河合莞爾『豪球復活』(講談社)だ。

 夏の甲子園優勝投手としてプロ入りした矢神大は、圧倒的な成績で7シーズンを過ごしたが、右肘の靱帯(じんたい)を負傷。再生手術は成功したが、精神的な原因で痛みが取れず投球ができなくなる。アメリカの滞在型リハビリ施設に送られた矢神はそこから失踪してしまう。半年後、ハワイでホームレス生活を送っていた矢神を、バッテリーを組んだこともあるブルペンキャッチャーの沢本が発見するが、天才投手はすべての記憶を失っていた。

 沢本と二人三脚で復活へ向け、トレーニングを積んでいく過程が前半の読みどころだ。投げ方すら覚えていない矢神の助けになったのが、矢神自身が残していた、投球技術を克明に記述したノートだった。だがノートの最後には、自分が記憶を失うことを予測するだけでなく、殺人を犯したことを示唆する一文が残されていた。

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