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安倍晋三元首相銃撃

2022年7月8日、演説中の安倍元首相が銃撃され、死亡しました。その後の「国葬」にも疑念が…。

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「鉄壁のガースー」の弔辞はなぜ多くの人の胸を打ったのか

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安倍晋三元首相の国葬で追悼の辞を述べる菅義偉前首相=東京都千代田区の日本武道館で2022年9月27日午後2時54分(代表撮影)
安倍晋三元首相の国葬で追悼の辞を述べる菅義偉前首相=東京都千代田区の日本武道館で2022年9月27日午後2時54分(代表撮影)

 日本武道館で9月27日に営まれた安倍晋三元首相の国葬を巡り、SNS上に「涙が出た」「心にしみた」との投稿が相次いだ。友人代表として読んだ菅義偉前首相の弔辞に対してだ。首相在任中は「自分の言葉がない」などと批判され、官房長官時代は記者の質問を一蹴する対応が「鉄壁のガースー」とも皮肉られた菅氏。その「言葉」がなぜ多くの人の胸を打ったのか。【佐野格】

「あなたへ」12分の別れの言葉

 <7月の8日でした。信じられない一報を耳にし、とにかく一命を取り留めてほしい。あなたにお目にかかりたい、同じ空間で同じ空気を共にしたい。その一心で現地に向かい、あなたならではの温かなほほ笑みに最後の一瞬、接することができました。あの運命の日から80日がたってしまいました>

菅氏の弔辞の要旨

 冒頭から安倍氏が凶弾に倒れた当日のショックを赤裸々に語った菅氏。時折、遺影を見上げながら、「あなた」と何度も呼び掛けてあふれるような安倍氏への思いを口にしていく。

 <季節は歩みを進めます。あなたという人がいないのに時は過ぎる。無情にも過ぎていくことに私はいまだに許せないものを覚えます>

 <そのまっすぐな目、信念を貫こうとする姿勢に打たれ、私は直感いたしました。この人こそはいつか総理になる人、ならねばならない人なのだと確信をしたのであります>

 2度目の自民党総裁選に出馬するように銀座の焼き鳥屋で2人きりになり、安倍氏を口説いた秘話も明らかにした。

 <私は一生懸命あなたを口説きました。それが使命だと思ったからです。3時間後にはようやく首を縦に振ってくれた。私はこのことを菅義偉、生涯最大の達成としていつまでも誇らしく思うであろうと思います>

 そして官房長官として首相を支えた7年8カ月を振り返った。最後には安倍氏が生前に読んでいたという書籍の中から、山県有朋が盟友、伊藤博文に向けて詠んだ歌を2度読み上げ、結んだ。

 <「かたりあひて 尽くしし人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」。深い悲しみと寂しさを覚えます。総理、本当にありがとうございました、どうか安らかにお休みください>

 約12分の弔辞だった。

 喪主の妻、安倍昭恵さんは涙ぐみ、会場からは拍手が起きた。SNS上にも賛辞があふれた。

 「聞いていて涙が止まらなかった。大切な盟友を失った人の言葉。それ以上でもそれ以下でもない、心のこもった言葉だった」

 「国葬に関しては反対ではありました。ただ、菅前総理の弔辞は正直ぐっとくるものがありました」

「菅さんにしか言えない言葉」

 首相在任中に政治部で総理番だった私(記者)も、長年政権を共にした菅氏ならではの思いが込められた弔辞だと素直に感じた。

 一方でこんな思いも抱いた。「首相在任中にこうした言葉で語っていれば、国民の受け止めも違っていたのでは」と。

 同じような感想を抱いた専門家がいる。

 スピーチやプレゼンテーションの指導をするカエカ社長の千葉佳織さん(28)だ。

 「思いをストレートに伝えているところがすごく良かったと思いました。赤裸々な語りや、安倍さんとの具体的な思い出の描写、自身の価値観や主張が前面に出ていた。菅さんにしか言えない言葉にあふれていました」

 千葉さんによると、菅氏の弔辞には主に以下のようなポイントがあったという。

▽定型の自己紹介やあいさつを除き、日付と心理描写から入ったことで聴衆を引き込む、秀逸な冒頭になっていた。

▽「あなたと同じ空気を共にしたい」など、敬語ではないことで本心からの言葉と受け止められた。

▽「武道館の周りには、花をささげよう、国葬儀に立ち会おうとたくさんの人が集まってくれています」など、聴衆とリアルタイムで感覚を共有できる言葉が多くあった。

▽エピソードに「銀座の焼き鳥屋」など具体的な描写やストーリー展開…

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【安倍晋三元首相銃撃】

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