異次元緩和「日本の実態に合わない」 元日銀理事が斬る
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日銀の黒田東彦総裁が主導した「異次元」の金融緩和導入から間もなく10年。2年間での達成を目指した目標は果たせず、最近では副作用が次々と表面化している。日銀の金融政策に詳しい専門家は異次元緩和をどう評価しているのか。黒田氏の下で日銀理事を務めた、みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫エグゼクティブエコノミストに、毎日新聞日銀キャップの岡大介記者が直撃した。
目標達成、ハードル高い
――資源価格高騰で日本の物価上昇率は2%を超えました。しかし、賃上げなどを伴う安定的な物価上昇を目指す日銀の理想とはいまだ遠い状況です。
◆これだけ緩和しても達成する見込みがないのだから、日本の実態には合わないということだ。足元の物価上昇は原油や穀物高など輸入コスト上昇によるもので、持続的・安定的なものではない。持続的な物価上昇が根付くにはそれを上回る賃上げが不可欠となる。政府・日銀が掲げる2%の物価安定目標を達成するには毎年3%程度の賃上げが必要だが、国内で最後に3%の賃上げが実現したのは1990年代初期までさかのぼる。達成がいかに難しいかが分かるだろう。
――達成が難しい目標を掲げたこと自体、適切だったのでしょうか?
◆現実的だったかというと、2%目標はそうではなかった。黒田氏の就任から昨年までの9年近く、国民の間で物価が話題になることはほとんどなかった。裏を返せば、日銀が目標とする「物価安定」が実現した状態だったということだ。しかし、2%という数字を掲げたせいで日銀はいつまでも必要のない金融緩和を続けなければならなくなった。2%目標が達成されなければデフレからの完全脱却ではないとされ、財政出動も含めて経済対策が幅広くゆがめられた。…
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