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映画「勝手にしやがれ」(1960年)などの作品で知られる映画監督、ジャンリュック・ゴダールさんが9月、スイスで認められている「自殺ほう助」で亡くなったと、地元メディアが報じました。91歳でした。日本国内ではその死を惜しむとともに、SNS(ネット交流サービス)では、安楽死の是非を巡っての投稿が相次ぎました。今回、そのような議論に終始するだけではなく、「生きたい」を創り出す技術にもっとスポットが当たればと思い、取材しました。【デジタル報道センター・生野由佳】
千葉県八千代市の医師、太田守武(もりたけ)さん(51)の手足は微動だにしない。頭や首を動かすことも、喜びや悲しみを、表情で伝えることもできない。
だが9月末、自分の意思で、一人で、電動車いすを操作し“自走”した。
操っているのは太田さんの「視線」だ。
目の前のパソコンに表示された右や左、下や上の矢印に視線を合わせると、車いすは、前後に動いたり、左右に曲がったり、体勢を変えたりと動作が変わる。嬉々(きき)として動き回るその姿からは、喜びにあふれていることが感じ取れた。
感想を聞くと、独自ルールの眼球の動きで「感動!」と介助者を通じ、一言。この車いす、まだ実験段階だ。
太田さんは、現時点では治療法のない難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う。手足の他、呼吸に必要な筋肉がやせ、自発呼吸が難しくなる。太田さんは気管切開し、人工呼吸器を装着する。
この病気で、最も恐れられるのが、症状が進むと意思や思考能力はあるのに、全ての筋肉を動かせなくなり、コミュニケーションが取れなくなる可能性ではないだろうか。
2020年には医師が関与し、京都市のALS患者の女性(当時51歳)が死亡した嘱託殺人事件が記憶に新しい。全く動けず、誰とも話せずに、生きていたいと思えるのか――。想像すると、私も答えは出せない。
「(生活における)障害があるというのは、…
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