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イランで髪を覆うスカーフ(へジャブ)の着用が禁じられたのは1936年だった。公共の場では警察から脱ぐことを強制された。王制の時代。近代化のため、女性の社会参加を増やす狙いだったとされる▲公務員ら教育を受けた一部の女性は適応したが、大半の国民は急進的改革についていけなかった。トラブルを避けるために外出しなくなる女性も多かったという。保守的なイスラム教徒は反発を強めた▲王制を倒した78~79年のイスラム革命で政権側の価値観は180度転換した。一時はスカーフ着用が王制批判の象徴になったものの、着用が義務づけられると、多くの女性が反対に立ち上がった。個人の選択に任せよという思いもあっただろう▲テヘランで先月中旬、かぶり方が不適切だと「風紀警察」に拘束されたクルド系女性が死亡し、イラン全土で抗議行動が続く。SNS(ネット交流サービス)上にはスカーフを脱ぎ、髪を切って抗議する女性たちの映像が流れる▲フランスではアカデミー賞を受賞したジュリエット・ビノシュさんら女性著名人が次々に髪を切る動画がSNSに投稿された。欧州議会の女性議員も演説時に髪を切り、連帯の動きが世界に広がっている▲「イスラムは民主主義や人権という価値に反するものではない。それを実現できないのはイスラムの解釈を間違っているからだ」。イラン女性の権利向上に努力し、ノーベル平和賞を受賞したシリン・エバディさんの言葉だ。イランの指導者に聞く耳はあるか。