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「丁寧に説明する」と言いながら、正面から答えない。これでは国会論戦が深まるはずもない。
岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が行われた。従来の答弁の繰り返しが目立ち、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題に本気で取り組む覚悟は見えなかった。
立憲民主党の泉健太代表は、教団との関わりが明らかになるたびに説明を修正する山際大志郎経済再生担当相の更迭を求めた。だが、首相は「自らの責任で説明を尽くす必要がある」と本人任せの姿勢を変えなかった。任命権者としての責任をどう考えているのか。
教団との接点を認めた細田博之衆院議長を、泉氏が問いただす場面もあった。議長は本来、答弁する立場にはないが、自ら説明するのが当然だ。
第2次安倍政権下の2015年に文化庁が教団の名称変更を認めた経緯も、国会質疑を通じて明らかにされなければならない。
立憲の西村智奈美代表代行は実態解明のため第三者による調査を求めた。しかし、首相は「未来に向かって関係を持たないことが大切」と取り合わなかった。
過去の検証もせずに「これから関係を絶つ」と言うだけでは、国民の不信は募るばかりだ。
突然、首相秘書官に長男を起用した人事にも疑問の声が出ている。「公私混同」ではないかとの質問に、「適材適所の観点から総合的に判断した」と説明したが、官僚のような紋切り型の答弁では納得は得られまい。
目新しさが感じられたのは、首相経験者の国葬について基準作りを検討すると答えたことくらいだ。ただ、安倍晋三元首相の国葬実施への批判をかわそうとの狙いが透けて見える。
内閣支持率が急落する中、野党の政権への向き合い方も変わりつつある。安倍・菅政権の「補完勢力」と呼ばれた日本維新の会が、国会で立憲と共闘を始めた。馬場伸幸代表は政府の物価高対策を「決断と実行が遅すぎる」と批判し、歩調を合わせた。
もはや「聞く力」だけでは、首相が掲げる「信頼と共感」は取り戻せない。野党の厳しい質問にも、真摯(しんし)に応じる「答える力」こそが求められている。