憧れた自衛隊、「変わってほしい」 性暴力被害の元自衛官に聞く

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
陸上自衛隊駐屯地での性被害を訴えた五ノ井里奈さん=東京都渋谷区で2022年10月5日、日下部元美撮影
陸上自衛隊駐屯地での性被害を訴えた五ノ井里奈さん=東京都渋谷区で2022年10月5日、日下部元美撮影

 防衛省は9月末、陸上自衛隊郡山駐屯地(福島県)に所属していた元1等陸士、五ノ井里奈さん(23)に対する複数の男性自衛隊員による性暴力を認め、防衛省幹部は五ノ井さんに謝罪した。防衛省では年々ハラスメントの相談件数が増えており、五ノ井さんの同僚の女性隊員も被害に遭ったことが判明している。自衛隊を辞め、中傷を受けても被害を訴え続ける五ノ井さんの思いとは。防衛省に求めることとは。

「認められたことは当たり前」

 防衛省は五ノ井さんに対する3件の性暴力の事実を認定し、同省の町田一仁人事教育局長と陸上幕僚監部の藤岡史生人事教育部長が五ノ井さんに面会し謝罪した。

 町田氏らが「長く苦痛を受けられた五ノ井さまに対し深く謝罪を致します」と頭を下げる様子をじっと見つめ、その後目を伏せた。

 「悔しさと悲しさがこみ上げた」

 五ノ井さんは当時の感情を説明する。自衛隊勤務時代から被害を訴えており、すぐ性暴力が認定され加害者から謝罪があれば辞める必要はなかったからだ。

 「認められたことは私からしたら当たり前の話。全くプラスのことではなく、全てが遅すぎる」

 いまもそう語る。

宮城で被災、女性隊員「かっこいい」

 五ノ井さんが自衛隊へ憧れを抱いたのは、2011年3月の東日本大震災の時だった。当時、宮城県東松島市に住み、被災した。

 避難所では、陸自の女性隊員らが住民のために風呂を設置するなどの支援をしていた。住民のためにお湯を何度も取り替えるなど、懸命に支援する隊員らを見ていて「かっこいいな。同じように人のためになりたい」と思った。

 幼稚園の頃から柔道を続けていた。中高生の時には全国大会のベスト16に入るほどの実力。五輪選手も輩出している自衛隊体育学校に入学することで、オリンピックを目指したい気持ちもあった。

「コミュニケーション」とされたセクハラ

 五ノ井さんは20年9月に郡山駐屯地に配属されて以降、日常的に性的な言葉を投げかけられたり、胸を触られたりキスをされたりするなどの被害を受けるようになる。こうしたセクハラは五ノ井さんに対してだけではなく、男女問わず行われていた。だが、周囲にそれを注意する人はほとんどいなかった。

 …

この記事は有料記事です。

残り1904文字(全文2808文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集