特集

ノーベル賞

「世界で最も権威のある賞」といわれるノーベル賞。今年はどんな研究・活動に贈られるでしょうか。

特集一覧

ノーベル平和賞 人権団体の活動家が示したロシアの未来への危機感

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
スターリン時代のソ連で数百万人が犠牲となった「大テロル」の死者を悼む、メモリアル主催の式典。集まった市民が犠牲者の氏名、年齢、職業、処刑日をリレー方式で読み上げた=モスクワのルビヤンカ広場で2015年10月29日、真野森作撮影
スターリン時代のソ連で数百万人が犠牲となった「大テロル」の死者を悼む、メモリアル主催の式典。集まった市民が犠牲者の氏名、年齢、職業、処刑日をリレー方式で読み上げた=モスクワのルビヤンカ広場で2015年10月29日、真野森作撮影

 今年のノーベル平和賞を同時受賞するロシアの人権団体「メモリアル」には、専門分野を持つ人権活動家が理事として名を連ねる。その一人、スベトラーナ・ガーヌシキナさん(80)は武力紛争が生み出した難民の救済に尽力し、紛争後の人権抑圧にも警鐘を鳴らし続けた。セルゲイ・クリベンコさんは兵士の戦死状況などを調査してきた。2人へのインタビューを振り返ると、プーチン大統領率いるロシアの将来への強い危機意識があった。

 大学の数学教師だったガーヌシキナさんは、ソ連時代末期の1988年、アゼルバイジャンとアルメニアが対立するナゴルノカラバフ紛争の発生をきっかけに、難民支援活動に足を踏み入れた。その後、特に力を注いできた問題がロシア南部に位置するチェチェン共和国を巡る人権状況だ。ソ連崩壊後の94年に第1次紛争が起き、99年に始まった第2次紛争では首相就任直後のプーチン氏が強硬姿勢で国民の支持を集めた。これが翌2000年の大統領選での勝利につながった。

 プーチン氏は自身に忠誠を誓う地元のラムザン・カディロフ首長にチェチェンの強権統治を許し、復興名目で巨額の資金を投じてきた。一方のカディロフ氏は傘下のチェチェン人部隊をウクライナ侵攻に参戦させるなど、強硬派のプーチン側近として存在感を高めている。

 15年6月、ガーヌシキナさんはチェチェン問題に関して記者(真野)のインタビューに応じた。小柄で穏やか、優しげな雰囲気を持つ女性だが弁舌は鋭い。大統領直属の…

この記事は有料記事です。

残り1114文字(全文1734文字)

【ノーベル賞】

時系列で見る

関連記事

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集