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猿沢池の向こうに興福寺の五重塔。奈良を代表するこの景色が、もうすぐ見られなくなります。五重塔の修理が2023年から本格的に始まるからです。奈良市民の一人としては寂しい気持ちもありますが、大切な塔を次の時代に受け渡していくために大切なこと。美しくなるのを気長に待ちたいと思っています。さて今回は、その塔のあまり知られていない秘密についてのお話です。【大阪学芸部・花澤茂人】
「この塔が長らく落雷で燃えなかったのはなぜだか分かりますか」。9月末、秋の青空を背景にそびえ立つ五重塔の前で、興福寺の教学部副主任、南俊慶(しゅんけい)さん(35)が参拝者に問いかけた。「塔をよく見てください。どこかにヒントがあります」
興福寺の五重塔は奈良時代の730年、光明皇后の発願で建立された。その後5回の焼失と再建を繰り返したが、そのうち3回は落雷が原因だ。興福寺に限らず、避雷針のない時代に背の高い塔は雷の格好の餌食となった。
国宝に指定されている現在の塔は、室町時代の1426年に再建されたもの。避雷針が設置される1907年まで500年近くもの間、火災を免れている。実は江戸初期と明治中期に2度落雷はあったものの大事には至らなかったらしい。それまでは長くても300年弱で焼失していることを考えると、6代目は特に長くその命を保ってきたと言える。
ここで冒頭の質問の答え合わせ。…
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