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臨時国会召集の野党案 立法府軽視改める契機に

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 臨時国会が始まった。野党各党が召集を要求してから、約1カ月半を経ての、あまりに遅い開会である。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)や安倍晋三元首相の国葬を巡る問題、物価高・円安対策など課題は山積している。岸田政権は、国会軽視との批判を免れまい。

 野党5党1会派は、憲法に基づく臨時国会の召集要求があった場合、20日以内の召集を内閣に義務づける国会法改正案を共同で提出した。今国会での「共闘」で合意した立憲民主党と日本維新の会が主導した。

 臨時国会に召集期限を設けるかどうかは、古くて新しい問題だ。

 憲法53条は、衆参両院いずれかの総議員の4分の1以上の要求があれば、「内閣は召集を決定しなければならない」と定めている。ただし、いつまでに開くという期限の規定がないため、要求があっても、棚ざらしにされる事態がたびたび起きてきた。

 2017年には、森友学園・加計学園問題の真相解明を理由に野党が召集を求めたが、安倍政権は応じようとしなかった。98日後にようやく開いたが、冒頭で衆院を解散したため審議は全く行われなかった。

 このケースでは、憲法違反だとして3件の裁判が起こされた。那覇地裁と岡山地裁の判決は、合憲・違憲の判断こそしなかったが「内閣は合理的期間内に召集すべき法的義務がある」と指摘した。

 憲法53条の趣旨は、国会の少数派に召集要求の道を開き、意見を国政に反映させることにある。いつ開くかを内閣の裁量にゆだねるのでは、趣旨に背きかねない。立法府の行政監視機能における野党の役割を損なうことになる。

 自民党も、野党時代の12年にまとめた憲法改正草案では、53条について「要求があった日から20日以内に臨時国会が召集されなければならない」と明記している。

 ただ、憲法を改正して期限を盛り込む方法は、実現のハードルが高い。本来ならば、内閣が憲法の趣旨を理解し、召集要求に迅速に応じるのが筋だが、それができないのなら国会法でルールを定めることを検討すべきではないか。改正案の提出を契機に議論を深めてほしい。

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