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習近平の中国

習近平体制は党大会を経て3期目が始動。権力集中が加速する異例の長期政権は、どこに向かうのでしょうか。

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3期目入りの習近平氏 権力集中どこまで 台湾政策で強硬策も

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国慶節の前日に開かれた夕食会で乾杯をする中国の習近平総書記=北京の人民大会堂で2022年9月30日、AP
国慶節の前日に開かれた夕食会で乾杯をする中国の習近平総書記=北京の人民大会堂で2022年9月30日、AP

 5年に1度の中国共産党大会が16日、北京で開幕する。習近平総書記(国家主席)が異例の3期目入りをするのは、ほぼ確実な情勢だ。習氏への権力集中は、どのような形でさらに強化されるのか。

「2期10年」の任期上限撤廃

 習指導部の2期10年では習氏への権威付けが進んできた。今回の党大会で異例の3期目に入れば、10年ごとに最高指導者が交代していた制度上の制約が外れ、習氏個人の権力は増大する。その理由や必然性は何か。中国メディア関係者は「何らかの形で、指導者自身が説明する必要があるだろう」と語る。

 建国の父・毛沢東の時代は、毛個人への過度な権力集中が進み、「文化大革命」などで中国社会は混乱に陥った。共産党はその教訓から、鄧小平が主導して、最高指導者の任期を区切って安定的に後継者へとつなぐ仕組みを整えた。鄧は1978年以降、最高実力者として改革・開放政策を推進。89年に自らが指名した江沢民氏に中央軍事委員会主席の座を譲り、引退した。江氏から胡錦濤氏、そして習氏への権力移譲は、おおむね予測可能な範囲内で進んだ。

 だが習指導部で大きな変化が起きた。全国人民代表大会(全人代)は2018年、2期10年の国家主席の任期上限を撤廃する改憲案を可決した。これに先立つ16年、共産党は習氏を別格の最高指導者である党の「核心」と位置付けた。17年の党大会では習氏の名前を冠した思想が党規約の行動指針に盛り込まれた。

コロナ対策で人気に陰りも対抗馬不在

 10年の慣例を破るからには、それなりの成果が必要となる。この間、共産党が習指導部の実績としてアピールしてきたのは貧困や汚職の撲滅だ。習氏は21年2月、さまざまな支援策によって「農村の貧困人口9899万人を解消した」と誇った。また反腐敗闘争では今年4月までに党や政府の幹部ら470万人の汚職や規則違反を立件。1134万人に対して警告や指導を行った。地方政府幹部などの汚職や傲慢な態度に不満を持つ市民からは歓迎された。習氏の反腐敗闘争は、エリート層を引き締め習氏の権力基盤を強化しただけでなく、国民の支持を引き寄せる効果もあった。

 習指導部の10年で経済規模は2倍以上となり、1人当たり国内総生産(GDP)は1万ドルを超えた。経済成長を背景に軍事力を強化し、巨大経済圏構想「一帯一路」によって中国の国際的な影響力は増大した。メディア規制による世論管理の効果もあって、習氏に対する一般市民の支持は引き続き高いとみられている。

 ただ、22年半ばごろから、支持に陰りも見え始めた。要因の一つは習氏が主導する新型コロナウイルス対策だ。コロナを徹底して封じ込める「ゼロコロナ」政策が経済に及ぼす悪影響が目立ち始めた。中国の経済誌「財新」は9月中旬の社説で「一部の地方政府による(コロナ対策を理由とした)権力乱用が経済社会の発展に対する巨大な障害になっている」と地方政府をやり玉に挙げる形で、ゼロコロナ政策を事実上批判した。

 それでも、現在の共産党で習氏に正面から対抗できる人物はおらず、今回の党大会で習氏へのさらなる権力集中が進む可能性は高い。権力集中は一時的な安定はもたらすが、トップが主導した政策を転換することが難しくなるほか、先行きの不透明感も増す。習氏が党大会で、3期目続投について党内外を納得させるメッセージを打ち出せるかも注目点の一つだ。【北京・米村耕一】

焦点は最高指導部人事

 共産党大会の焦点の一つは最高指導部を構成する政治局常務委員(現在は7人)の人事だ。新た…

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【習近平の中国】

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