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習近平の中国

習近平体制は党大会を経て3期目が始動。権力集中が加速する異例の長期政権は、どこに向かうのでしょうか。

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迫る人民解放軍 ドローン撃墜に高まる緊張 台湾海峡の最前線

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無人機(ドローン)に対応する台湾軍の兵士=台湾の離島・金門島で2022年9月2日(国防部軍事新聞通信社提供)
無人機(ドローン)に対応する台湾軍の兵士=台湾の離島・金門島で2022年9月2日(国防部軍事新聞通信社提供)

 5年に1度の中国共産党大会が16日、北京で開幕する。習近平総書記(中国国家主席)は台湾統一に強い意欲を示しており、台湾問題は重要なテーマとなる。台湾の蔡英文政権は、習氏が党大会で異例の3期目入りを決めれば、軍事や外交などで中国からの圧力が一層強まると警戒する。緊張が高まる台湾海峡の最前線を取材した。

 8月上旬の夜、中国南部・福建省アモイ市の沖合にある金門島。台湾が実効支配するこの島で防衛の任務に当たる台湾軍兵士の視界に、赤い閃光(せんこう)が走った。無人機(ドローン)だ。夜間でも肉眼でそれと分かるほどの近さを飛行していた。

 中国は8月2日のペロシ米下院議長による台湾訪問に猛烈に反発し、4日から台湾を包囲するかのように大規模な軍事演習を実施。ミサイルを台湾近海に次々と落とした。

 金門島でも3日夜、中国軍の無人機とみられる機体が上空を通過したばかりだった。不穏な空気が漂う中で突然飛来した無人機。兵士はこう振り返る。「こんなに近くまで無人機が飛んで来たことはなかった。何が起きるか分からない状況下で、緊張感が高まった」

 この時は上官の指示で赤外線を照射するなどし、約5分後、無人機は去った。

 無人機はミサイルを搭載できる軍用も多く、現代戦で重要な戦力の一つだ。ウクライナ戦線でもウクライナ軍が無人機でロシア軍を攻撃し戦局を好転させた。

 金門島上空の無人機を撃墜すれば中国との緊張がさらに高まりかねない。台湾軍は当初、撃墜許可を出さず信号弾で警告するよう指示した。だが無人機がすぐに引き返さないこともあった。

 金門島はかつて中台攻防の最前線だった。1958年には中国軍の砲撃で金門島に約48万発の砲弾が降り注いだが、台湾軍は島を死守した。昔を知る住民からは、8月中旬に台湾軍の兵士が空中を飛ぶ無人機に向けて投石する様子が中国のソーシャルメディアで拡散すると「台湾軍には対抗する方法がないのか」と不安視する声も出た。

 台湾与党・民進党の幹部は8月29日、金門島駐留軍を慰問した際、軍幹部に「有効な対抗策はないのか」と尋ねた。軍幹部はこう答えた。「本日、国防部から撃墜許可が下りました。我が軍は(無人機を)制止するため発砲できる」。その3日後、…

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【習近平の中国】

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