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ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナに侵攻。米欧や日本は対露制裁を決めるなど対立が先鋭化しています。

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プーチン氏は核を使うのか 識者が危惧する最悪のシナリオ

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ロシアのプーチン大統領(左)とショイグ国防相。いずれも「核のカバン」を持つとされる=モスクワの露大統領府で2022年4月21日、AP
ロシアのプーチン大統領(左)とショイグ国防相。いずれも「核のカバン」を持つとされる=モスクワの露大統領府で2022年4月21日、AP

 ウクライナでロシア軍が劣勢に追い込まれ、決め手を欠くプーチン露大統領が核兵器の使用に踏み切るのではないか――。そんな観測が強まっている。これまでロシアが保有する世界最大級の「核」をちらつかせてきたプーチン氏が「究極の決断」に踏み切ることはあるのか。ロシアの外交・安全保障問題の専門家、ドミトリー・トレーニン氏に聞いた。【和田浩明】

戦況から見た核使用の可能性は?

 軍の劣勢が伝えられる中、プーチン氏は9月30日にウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州と南部ザポロジエ、ヘルソン両州を自国領に組み込むと宣言した。事態は刻々と変化している。トレーニン氏が10月5日に書面インタビューに応じ、まずは現在の戦況について分析してくれた。

「ウクライナ軍は作戦上重要な成果を上げたが、戦略的な勝利には至っていない。モスクワの対応は、予備役の部分的な動員や4州のロシアへの編入だ。私の見立てでは、このような状況で核兵器に頼ることは軍事的に意味を成さない。(核を使えば)政治的、その他の報いを受けることは言うまでもない。今のところ、プーチン氏が自暴自棄になっている様子もうかがえない」。つまり、現状では核使用は考えにくいという読みだ。本当にそうなのか。

 ウクライナ軍の「作戦上重要な成果」とは、9月下旬から10月上旬にかけて北部ハリコフ州や南部ヘルソン州の広範な地域で支配を取り戻したことだ。ロシアが「自国領」と主張する領域でも失地回復が進む。それだけに、プーチン氏が「ロシア領への直接攻撃」を理由に核兵器で反撃するリスクが高まったと見る向きもある。しかし、トレーニン氏はこう指摘する。

 「プーチン大統領は、ウクライナに対して『核兵器を使用する』と、あからさまに脅したことはない。軍事作戦の開始時、核保有国としてのロシアの地位に言及したが、これは米国と、米国のパートナーである北大西洋条約機構(NATO)加盟国がウクライナ戦争に直接関与するのを抑止する目的だった」

 「核の脅し」は、米欧を抑えるため、との評価だ。「私が見るところ、ロシアが核使用に向けて動き出した兆候はない。米国の情報機関が今のところそのような動きを観測していないとの報道もある」という。

 しかし、プーチン氏は9月30日、広島と長崎への原爆投下を引き合いに出し、「米国が核兵器使用の前例を作った」と述べた。ウクライナの4州の「併合」を宣言したときの演説の中で出た発言だ。

 トレーニン氏は「前例踏襲を示唆するロシアの警告と受け取るコメンテーターもいる。コメンテーターが言っているのであって、プーチンではない」と述べた。しかし、核戦争が全面的に否定されるわけではないという。

核戦争へのシナリオ

 プーチン氏が核兵器の使用に踏み切る状況があるとすればそれは何か。トレーニン氏は…

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【ウクライナ侵攻】

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