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第81期名人戦

第81期名人戦は、渡辺明名人は4連覇を懸け、藤井聡太王将は名人獲得の最年少記録更新を懸けた戦いに。解説付き棋譜中継は「七番勝負棋譜速報」からご覧いただけます。

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糸谷八段「筋悪の手が正解」見えず 藤井王将2勝目 A級順位戦

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A級順位戦3回戦で糸谷哲郎八段(手前右)と対局する藤井聡太王将(同左)=名古屋市中村区の名古屋将棋対局場で2022年9月12日午前10時、兵藤公治撮影
A級順位戦3回戦で糸谷哲郎八段(手前右)と対局する藤井聡太王将(同左)=名古屋市中村区の名古屋将棋対局場で2022年9月12日午前10時、兵藤公治撮影

 9月12日に名古屋将棋対局場で指された▲藤井聡太王将(対局時1勝1敗)―△糸谷哲郎八段(同1勝1敗)戦は、お互いの残り時間が1時間を切っても均衡が崩れない大激戦となった。双方にミスがあってそれぞれにチャンスがあったが、プロの目に筋が悪く映る手が正着という落とし穴に糸谷八段がはまり、藤井王将が辛くも勝ち切った。両者は対局中に何を考えていたのか、椎名龍一さんの観戦記で分析する。

第1譜(1~25)

 ▲2六歩   △3四歩   ▲7六歩   △8四歩

 ▲2五歩   △8五歩   ▲7八金   △3二金

 ▲2四歩   △同歩    ▲同飛    △4二玉

 ▲5八玉2  △7二銀   ▲3四飛1  △8六歩

 ▲同歩    △同飛    ▲2四飛1  △7四歩

 ▲2六飛1 ▽△5二玉25  ▲8七歩23  △8五飛5

 ▲7七角16(第1図)

(持ち時間各6時間 消費▲44分△30分)

※▽作戦

2年前の対戦なぞる

 今年6月から新設された名古屋将棋対局場に向かった。同対局場は名古屋駅のすぐ目の前にあるミッドランドスクエアというオフィスビルの25階にある。

 名古屋駅構内には、きしめん、みそ煮込みうどん、ひつまぶしなど、東京からの出張組にとっては魅力的な店が並び、遠征中に何を食べようかと考えながら歩いた。名古屋対局場での観戦は初めてのことで、軽い緊張をほぐす意識もあった。

 ミッドランドスクエアにはトヨタ自動車の名古屋オフィスが入っている。エレベーターで24階まで上がると広々とした受付があり、その周辺にはトヨタ関連のグッズや写真が展示されている。超一流企業のオフィスビルに入ることなどめったにないので早くもけおされ気味だ。

 受付の前を通ってエスカレーターに乗るのだが、そこで警備員に身分証明書を提示すると対局場のある25階へ上がることが許される。観戦席に座った時には正直ほっとした。藤井は既に盤の前に着座。糸谷は開始ギリギリでの到着で、飲み物を三つ載せたお盆を両手で持ち、ソロソロとした歩調で盤の前に着いた。

 後手番の糸谷が横歩取りに誘導し、△4二玉と序盤に注文を付けた。2年前に両者が銀河戦決勝で対戦したときと同じ手で、そのときは藤井が勝利を収めている。

第2譜(26~3…

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【第81期名人戦】

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