樹木の伝染病「ナラ枯れ」ついに皇居でも 今、再拡大する理由とは
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昆虫が媒介する樹木の伝染病「ナラ枯れ」の被害が再拡大している。東京23区で最大の緑地の皇居(千代田区)にも到達し、クヌギやコナラが枯れ始めている。首都圏の被害は数年前までごく限定的だった。なぜここまで被害が広がるのか。
「皇居ではこれまで一度もナラ枯れの被害に遭ったことはありませんでした。我々の先輩が守ってきた大切な木が枯れるのは忍びない」。皇居での庭園管理に携わって42年目のベテラン、宮内庁の山口幸也・庭園専門官は危機感をあらわにする。
10月初旬、皇居東御苑内の「二の丸雑木林」を山口さんに案内してもらった。昭和天皇の発案で武蔵野の雑木林を再現しようと造成された林だ。
しばらく歩くと、白っぽい木くずが根元に落ちているクヌギやコナラが何本も見つかった。山口さんによると、木くずは「フラス」と呼ばれ、ナラ枯れの兆候だという。
ナラ枯れは、体長5ミリほどの甲虫「カシノナガキクイムシ」(カシナガ)が媒介するナラ菌が引き起こす伝染病だ。主にブナ科の木が感染し、水を吸う能力を失って立ち枯れする。カシナガが集団で穴を掘って侵入する際、フラスが排出されるのだ。
国立科学博物館は1996年から継続的に皇居の生物相を調査しているが、報告がまとまっている2014年までの調査でカシナガは発見されていなかった。
ところが20年、皇居でナラ枯れが初めて見つかった。東御苑などでコナラとクヌギ16本が枯れ、21年にはシイやカシなど常緑樹まで被害が広がった。
宮内庁は拡大を防ぐため、枯れた木を伐採して切り株に薬剤を浸透させ、カシナガを駆除しているが、沈静化できていない。
関東地方では他にも、鎮守の森で知られる明治神宮(渋谷区)や、「トトロの森」がある狭山丘陵(埼玉県、東京都)など、各地で被害が出ている。
猛毒キノコやスズメバチも
ナラ枯れは90年ごろから日本海側を中心に目立つようになった。総被害量は10年度にピークを迎え、いったん落ち着いたが、20年度から再び増えた。
近年の被害は主に東北や岡山県などで大きい。これまで確認されなかった関東でも急増し、神奈川県は21年度の被害が全国2位になった。被害が確認されていないのは北海道や愛媛県など5道県だけだが、北海道でも20年にカシナガが見つかっている。
ナラ枯れに伴ってやっかいな問題も起きている。その一つが…
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