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陸上自衛隊郡山駐屯地(福島県)に所属していた元1等陸士、五ノ井里奈さん(23)が複数の男性隊員から性暴力を受けていた問題で、関与した隊員のうち4人が17日午前、非公開の場で、五ノ井さんに直接謝罪した。午後、東京都内で開かれた記者会見で、五ノ井さんは「『二度と同じ過ちを繰り返さないように、一生罪をつぐなってください』と伝えました」と述べ、謝罪を受けた状況を明らかにした。これまでのプロセスを専門家はどうみるか。1980年代に日本初のセクハラ訴訟を担当し、これまで多くの性暴力問題に携わってきた角田由紀子弁護士(79)は「なぜ謝罪にここまでの時間がかかったのか、組織構造の問題に目を向けるべきだ」と指摘する。【宇多川はるか】
被害訴えから、謝罪までの過程
五ノ井さんは2020年9月に郡山駐屯地に配属された。五ノ井さんによると、人事担当の部署にセクハラ被害を訴えたが、「証言が得られなかった」と報告を受けた。その後、被害届を出し、陸自警務隊が隊員3人を強制わいせつ容疑で書類送検したが、22年5月、不起訴処分に。
五ノ井さんは翌6月に退職し、不起訴処分を不服として郡山検察審査会に審査を申し立てた。同じころ、動画投稿サイト「ユーチューブ」やSNSなどで被害を訴え、調査と謝罪を求めてきた。
そして、検察審査会が22年9月7日に「不起訴不当」と議決。その約3週間後の29日、防衛省は、性暴力の事実を確認したと発表。幹部が五ノ井さんに直接謝罪した。
被害として、20年秋に複数の隊員に体を触られた▽21年8月の訓練中に宿舎で押し倒されて性的な身体接触をされ行為を口外しないよう口止めされたりした――などを認定した。その後、五ノ井さんの要求に応じ、加害側の直接謝罪がようやく実現した。
ハラスメントは不均衡な力関係から
このような経過をたどった自衛隊の対応について、角田弁護士は、「加害側も組織も、人の尊厳を傷つけたと理解できていたとしたら、内部で告発した時に謝罪しているはずです。なぜ今なのか。世論を沈静化するために謝罪していないでしょうか」と投げかける。そして、担当したセクハラ訴訟の被害者の多くもまた、「何より謝罪を求めてきました」と振り返った。
今回のケースでは…
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