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自国の強さを追い求めるだけで、国民の間に広がる閉塞(へいそく)感を打破できるのだろうか。
5年に1度の中国共産党大会が開幕した。党トップとして異例の3期目入りが確実視される習近平国家主席が、活動報告の演説で強国路線の継続を打ち出した。
世界をリードする「社会主義現代化強国」の建設は、前回大会で自ら掲げた長期戦略である。
しかし、その後の5年間で、中国を取り巻く環境は一変した。
米国との対立が激化し、日本を含む周辺国との摩擦が絶えない。新疆ウイグル自治区などの人権問題やロシアのウクライナ侵攻を巡って、欧州との溝も深まった。
国内に目を移すと、経済の失速が覆い隠せない状態だ。厳しい行動制限で感染拡大を抑え込む「ゼロコロナ」政策が消費の低迷や雇用の悪化という副作用を招いた。
開幕の数日前には、北京の陸橋に、習氏を批判する横断幕が掲げられた。先行きの見えない不安の表れと言えるだろう。
「世界は100年に1度の激変期にある」。習氏はそう言いながらも、状況の変化に応じた処方箋を示せているようには見えない。
懸念されるのは、力を頼みに主張を押し通すような振る舞いだ。
香港での民主派弾圧や台湾海峡での軍事行動について他国からの批判を受け付けようとしない。
ナショナリズムの高まりも気がかりだ。台湾統一に向けて「武力行使の放棄を約束しない」と述べると、会場から大きな拍手が起きた。強硬姿勢を打ち出すことで求心力を維持しようとしているように映る。
「中国式現代化」の優位性を強調し、米国中心の秩序や価値観に対抗する姿勢を鮮明にした。
市場原理よりも「国家の安全」を優先し、経済や科学技術で自立性を高めようとしている。グローバル経済をけん引する中国が内向きになれば影響は計り知れない。
習氏への権力集中がさらに進むことが予想されている。だが、異論を封じて誤りを正せなくなれば政策は硬直化し、国際協調が成り立たなくなる。
「永遠に覇を唱えず、拡張もしない」。それを言葉だけでなく行動で示さなければ、責任ある大国としての信頼は得られない。