自立した存在から「商品」へ 遊女への蔑視はなぜ広がったのか
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

秋の夜長、映画鑑賞や読書をして過ごす人も多いのではないでしょうか。「遊女」は昔から映画や小説の題材として取り上げられてきました。最近では遊郭編が放映されたアニメ「鬼滅の刃」のイメージが強いかもしれません。鬼滅は大正時代の吉原遊郭が舞台ですが、今回は研究で明らかになった、中世の遊女の意外な姿を紹介します。【デジタル編集本部・牧野宏美】
普段は来館者の多くが高齢の男性という国立歴史民俗博物館で、若い女性の人気を集めた企画展示がある。2020年に開催された「性差(ジェンダー)の日本史」だ。さまざまな時代が専門の研究者が、男女の区分はいつどのように生まれ、変化していったのかをまとめたもので、中でも性売買の歴史を説明したコーナーは話題になった。
「性の売買には、各時代の社会とジェンダーのあり方が深く反映されています」。そう話すのは、企画展示の共同研究者の一人で、「中世の〈遊女〉-生業と身分」の著書がある辻浩和・川村学園女子大教授(日本中世史、女性史)。辻さんは数年前から大学でも遊女の生活実態や社会との関係を教えている。
「売春は最古の女性の職業」とも言われるが、辻さんによると、近年の研究では、日本で職業としての売春が生まれたのは平安時代の9世紀後半ごろとされる。それまでの社会では男女の関係は緩やかで、性売買自体が成り立たなかった。
興味深いのは、売春が始まった当初の遊女像だ。遊女は…
この記事は有料記事です。
残り1175文字(全文1771文字)