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まいにちボードゲーム

日本ではゲームといえばテレビやスマホがメインですが、近年、対面で行う非電源ゲームも注目を集めています。人気のボードゲーム・カードゲームを紹介します。

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大空のロマン 航空機ゲーム

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 10月にスタートしたNHKの連続テレビ小説「舞いあがれ!」は、パイロットを夢見る女性が主人公。大空への憧れは、人類が連綿と持ち続けるDNAなのかもしれません。とはいえ飛行機の離着陸に今でも緊張する筆者は、搭乗するよりも空港の近くで見ている方が好み。今回は航空機をテーマとした2作品を紹介します。

燃料管理で差がつく「ユーコン・エアウェイズ」

水上機で乗客を運んでお金を稼ぐ「ユーコン・エアウェイズ 白夜のチャーター便」 拡大
水上機で乗客を運んでお金を稼ぐ「ユーコン・エアウェイズ 白夜のチャーター便」

 カナダ・ユーコン準州は、米アラスカ州に接する自然豊かな地方です。19世紀後半のゴールドラッシュにより人口が集積。準州都ホワイトホースはオーロラ観測と犬ぞりレースで有名です。街を流れるユーコン川はカヌーの聖地として知られ、人気テレビ番組「水曜どうでしょう」でも大泉洋さんらが挑戦していましたね。

左側の桟橋にならぶサイコロは乗客。燃料をうまく管理して効率良く運びたい 拡大
左側の桟橋にならぶサイコロは乗客。燃料をうまく管理して効率良く運びたい

 「ユーコン・エアウェイズ 白夜のチャーター便」の舞台は1979年の夏。プレーヤーは水上機の操縦士となり、ホワイトホースから乗客を乗せユーコン各地へと送り届けます。メインボードの左側に桟橋が六つあり、ラウンドごとに乗客を表すサイコロをじゃらっと振り、出目に従ってそれぞれの桟橋に割り振ります。

 手番になれば桟橋にある同色のサイコロを水上機カードに乗せ、目的地チケットを手札から出してフライトに出発。遠くまで乗客を運べばその分収入は増えるのですが、十分な燃料が必要です。個人ボードのメーターで管理する燃料は、選んだ桟橋に付随するアクションや目的地チケットの追加廃棄により増やすことができますが、それでも乗客を乗せれば乗せるほど燃料を積むスペースが少なくなるジレンマが。目的地に乗客と同じ色のキューブがあれば水上機の性能を改良できるので、綿密なフライト計画が要求されます。とはいえサイコロの出目や目的地チケットの引きなど運要素もあるので思うに任せない場面も多く、運と戦略のバランスが良い中量級の佳作と言えるでしょう。

世界の空を「パンナム」と共に

グローバルな航空会社と歩調を合わせて路線を拡大する「パンナム」 拡大
グローバルな航空会社と歩調を合わせて路線を拡大する「パンナム」

 パンアメリカン航空(愛称・パンナム)は、1927年に創業し91年に歴史を閉じた米国を代表する航空会社です。フロリダ州キーウェストとキューバのハバナ便を皮切りに路線を拡大させ、世界の空を制覇する初のグローバル航空会社に成長。航空自由化と高コスト体質のためユナイテッド航空などへ次々と路線を切り売りし、最後は湾岸戦争(91年)勃発による乗客減少と燃料高騰が引き金になり破産してしまいました。

パンナムと競うのではなく、開拓した路線を買収してもらい利益を得て株を入手する 拡大
パンナムと競うのではなく、開拓した路線を買収してもらい利益を得て株を入手する

 ボードゲームの「パンナム」では、プレーヤーは駆け出しのローカル航空会社の社長。パンナムは路線拡大期に各地のローカル航空会社を次々に買収する手法を駆使しました。ゲームでも自社を世界的航空会社に育てるのが目的ではなく、魅力的な路線、空港、飛行機を獲得してパンナムに売却。その利益でパンナム株を購入していきます。米国作品らしいですね。パンナム創業から創業者の一人ファン・トリップの引退までの7ラウンドを戦い、お金ではなくパンナム株を一番多く保有しているプレーヤーが勝利します。

目的地カードや機体の購入は、「押し出し競り」方式の入札で。灰色プレーヤーが左下のカードの「2」に入札した時点で、「0」に入札した赤プレーヤーのエンジニアは押し出されて手元に戻る 拡大
目的地カードや機体の購入は、「押し出し競り」方式の入札で。灰色プレーヤーが左下のカードの「2」に入札した時点で、「0」に入札した赤プレーヤーのエンジニアは押し出されて手元に戻る

 メインとなるメカニクスは「押し出し競り」と呼ばれる入札。各プレーヤーは4人戦の場合3人のエンジニア(ワーカー駒)を、空港▽目的地▽飛行機▽ルート▽指令――の五つのアクションに派遣します。このうち空港、目的地、飛行機の三つは、お金を払ってアクションを獲得しなければなりません。例えば目的地カードが4枚並べられている目的地アクションでは、カードの横にそれぞれ下から「0」「2」「4」「6」のマスが。あるカード横の「0」にエンジニアを派遣したとします。このままなら無料でカードを獲得できますが、他のプレーヤーが「2」にエンジニアを派遣したら自分のエンジニアは押し出されて手元に。さらに大きな数字にエンジニアを置かない限り「2」に派遣したプレーヤーが2ドル払ってカードを得るという仕組み。お金が払えない場合、手持ちのパンナム株を売ってしのぐ方法もありますが、売却価は現在の株価から2ドル引いた値となります。

 持ち金は非公開なので、この入札システムによりプレーヤーの思惑が入り乱れます。

 「どうしてもあの都市に空港の着陸権が欲しいから5ドルから入札するか」「いやそうするとお金持っていそうな黄色プレーヤーが7ドル出すかも。いっそ最高額の9ドル入札にする?」「いやいやそうすると3株売らなくてはならないし損だなあ」

 飛行機ゲームというより経済ゲームなのかもしれません。パンナムの路線拡大は、アジア太平洋航路の可能性が最も高くヨーロッパ航路の可能性が最も低いのですが、サイコロによって決まるので運次第な面も。白い機体に青いマークのパンナム機が大空を闊歩(かっぽ)していた時代に思いをはせながら、巨大航空会社の諸行無常を感じてみてはいかがでしょう。【野地哲郎】=次回は11月5日掲載

「ユーコン・エアウェイズ 白夜のチャーター便」データ

 1~4人用◆所要時間60~90分◆14歳以上対象◆アル・ルデューク作◆2019年初版

「パンナム」データ

 2~4人用◆所要時間60分▽12歳以上対象◆プロスペロ・ホール作◆2020年初版

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