セクハラ謝罪受け、元自衛官の言葉から「被害者は笑えない」を考える
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

陸上自衛隊郡山駐屯地(福島県)に所属中に複数の男性隊員から性暴力を受けた元1等陸士、五ノ井里奈さん(23)が10月17日、記者会見し、加害側の隊員4人から直接謝罪を受けたことを明らかにしました。「区切りにしたい」と表明した五ノ井さんが言及したのが「今後の生き方」でした。その言葉から、自戒を込めて、考えました。周囲は、被害者に被害者というイメージを押しつけ、2次被害を与えていないだろうか。被害者は笑ってはいけないのか――。【デジタル報道センター・生野由佳】
「謝罪をされたから許される問題でもないと思うし、私の傷は一生の傷なので、しっかりと自分のしたことに責任を持って、罪をつぐなってほしいと思っています」
五ノ井さんは加害者と面会後、会見でこう語った。謝罪は受けたが、加害行為が消えるわけではない。
2020年9月に郡山駐屯地に配属されて以降、日常的なセクハラや性暴力があったと訴えてきた。防衛省は22年9月末、▽20年秋に複数の隊員に体を触られた▽21年8月の訓練中に宿舎で押し倒されて性的な身体接触をされ、行為を口外しないよう口止めされた――などの被害を認定。加害側からの直接の謝罪は、五ノ井さんが要求していた。
五ノ井さんは、被害を受けてからの日々を振り返り、「本当に遅かったですけれど、(謝罪を受け)私の区切りとさせていただきます」と述べた。そして、会見の最後に立ち上がり、今後を「自分らしく」と強調した。
「私は被害に遭ったからこう生きなければならないとか、静かに生活しなければいけない、笑ってはいけないというわけではなく、被害者としてではなく一人の人間として、強く生きて、いろんな人を笑顔にさせたり、人のために何かできることをしたり、とにかく自分らしく生きていきたいと思います」
このメッセージに、私は「被害者のイメージ」に悩む人たちの姿を思い出した。被害者は笑ってはいけない。静かに暮らさなければならない。日本にはその空気感が強くあるのではないか――。
…
この記事は有料記事です。
残り826文字(全文1663文字)