通信制でグラウンドなし　日本ウェルネスが新旋風　秋季高校野球

　高校野球の秋季九州大会は23日、沖縄市のコザしんきんスタジアムなどで1回戦があり、日本ウェルネス（沖縄）は佐賀北を6―2で破り、大会初出場で勝利を飾った。

　九回2死満塁のピンチで、佐賀北の4番打者を迎えても日本ウェルネスの先発・上原律己投手（2年）は平常心を忘れなかった。本塁打を浴びれば同点の場面で、得意のスライダーで三ゴロに打ち取り試合終了。2007年夏の甲子園で「がばい旋風」を巻き起こして全国制覇したチームから勝利をもぎ取った。

　公式戦の間隔が3週間も空いていたために、チームは実戦感覚への不安を抱えていた。しかし、一回に相手のミスに乗じて3点を奪うと流れをつかんだ。右腕・上原は持ち味である低めに丁寧に投げることを意識し、雨で足場が悪いながらも力投を続けた。

　広域通信制の高校で、2018年に創部。野球部員はスポーツ専攻に所属する。専用のグラウンドがないため、平日はコザしんきんスタジアム（沖縄市）などで練習しながら、スタジアム内の部屋で勉強を行うなどしている。

　19年8月に就任した五十嵐康朗監督（55）はチームを初めて見た時の感想を「昭和のように純粋に野球をやっていた」と語る。公園で野球をやっていたり、土の上を裸足でプレーしたりする姿を見て「自分の小学生時代を思い出して、一緒にやってみようと思った」と振り返る。

　甲子園にも出場した青森山田時代に雪で練習環境に悩まされたことを考えると、グラウンドがないとはいえ「倍ぐらいの時間の指導ができる」と喜ぶ。21年6月からは緊張から解放する意味も込めて「丸刈り」も廃止となった。

　初めての九州大会で1勝を挙げたが「特別とは思っていない」と五十嵐監督。淡々とした語り口調だったが、うれしそうな表情を浮かべたのは準々決勝の対戦相手について質問された時だ。「（長崎日大の平山清一郎監督は）大学時代の教え子なんですよ。カステラをいただきました。まさか教え子と試合ができるなんて。楽しみです」とほおを緩ませた。

　エースの上原も「優勝して明治神宮大会に行きたい」と力を込める。九州大会に新しい旋風を吹かせる意気込みだ。【藤田健志】