夫婦げんか、育休で激増 夫が妻視点で気づいた「やってる」感のずれ
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育休を取った先に待ち受けていたのは、神経がすり減る夫婦げんかの激増だった――。そんな体験から、悩み抜いた末に「パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!」という本を出版するに至った男性がいる。内閣官房こども家庭庁設立準備室の前田晃平さん(39)。家事・育児を巡る夫婦のいさかいの果てに、見えてきたものは。【宇多川はるか】=連載は随時掲載
「頑張っているのに、なぜこんなことに…」
2019年10月、待望の長女が生まれた。当時、認定NPO法人「フローレンス」で働いていた前田さん。子育てを巡る課題解決に取り組むNPOだったが、自分自身が赤ちゃんの世話をする具体的なイメージは湧いていなかった。
「(妻と)大人2人で小さい赤ちゃんの要求を満たすだけなんて、育休は最高すぎる……」。そんなふうに思っていた。「普段できないことをしよう」と、読みたかった本も買い込んで、2カ月の育休に入った。
だが、いざ始まった新生児との生活は、思い描いていた「寝かしつけた後にコーヒーを飲みながら本でも読む」暮らしとは程遠かった。寝付かずに泣き続ける赤ちゃんを前に、想定外だったのは絶えない夫婦げんか。良かれと思ってやったことが、妻の怒りに火をつける。
火種はいつも、ささいなことだ。風呂やトイレなどの水回りを掃除すると、「かびや汚れが残っている」と言われる。それが前田さんにとっては「言いがかり」となり、妻にとっては「まっとうな指摘」になった。
外出時の娘の服を巡っても、前田さんが「問題ない」と思って着せた服を、妻に「寒いのに薄着だ」と言われ、口論に。娘をあやしている時や、哺乳瓶の消毒についても、けんかが勃発した。
2カ月の育休が終わった直後も、夫婦のニーズはすれ違った。
例えば20年3月の「ホワイトデー」のこと。仕事の帰路、妻に少しでも喜んでもらおうと、おいしいお菓子を買って帰った。少し遅くなって帰宅すると、家事・育児を一日担い、人手を必要としていた妻は怒っていた。
「なんでそういうことするの? ちょっと考えれば分かるでしょ」。妻のその言葉に、「育休を取った後も頑張ろうとしているのに」という反発の思いが芽生える……。その繰り返しだった。
要因は主体性のなさ
なんでこんなことになるのか。自問し続けた前田さんは、育休が終わって数カ月たって気づいた。「妻をキレさせているのは、自分の家事・育児への主体性のなさだ」。いつの間にか、妻を「手伝っている」感覚になっていて「指示待ち」状態だったのだ。とにかく、妻に言われなければ動かない状態になっていた。
「出産した後の子育てにおいて、夫婦で起こることが想定できないのは、男女とも同じだと思うんです。結婚する時に、子どもが生まれた後について、すり合わせることはしないじゃないですか。少なくとも、私は恋愛で盲目になって、『今』が楽しくて結婚していました」
前田さんは「ただ」と続ける。…
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