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宗教と子ども

親の信仰の影響を受けて育った多くの「宗教2世」たちが声を上げ始めています。

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宗教2世の苦しみ、描かねばならなかった 漫画家・菊池真理子さん

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菊池真理子さん=文芸春秋提供
菊池真理子さん=文芸春秋提供

 安倍晋三元首相の襲撃事件をきっかけに、信教を持つ親のもとに生まれた「宗教2世」の存在に注目が集まっている。そんな中、漫画家で自身も宗教2世の菊池真理子さん(50)が自分を含む7人の当事者の半生を描いたノンフィクション漫画を出版した。「私たちのことを知って」。そんな切実な声を、社会は、そして私たちはどう受け取るのか。

連載打ち切りを経て出版

 漫画は「『神様』のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~」(文芸春秋)。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)だけでなく、さまざまな宗教団体の「2世」をインタビューし、半生を描いている。

 漫画やテレビなどの娯楽を禁じられ、誕生日もクリスマスも祝えなかった人。恋愛はおろか異性と仲良くなることすら禁じられた人。ムチでお尻をぶたれたり、医療行為を受けさせてもらえなかったり、明らかな虐待も描かれている。

 団体や教義は違っても、共通する苦しみがある。信仰を捨てる時の葛藤。そしてその後の生きづらさ。信仰を通して育んだ人間関係を失い、孤立したり、親と絶縁せざるを得なかったり。社会の根強い偏見を恐れ、過去を明かせない人もいる。子ども時代からすり込まれた宗教的な価値観や考え方からなかなか自由になれないことも多い。

 <神や仏に愛されるよりも 私たち 親に愛されたかった>。漫画ではそんなつらい言葉が明かされる一方、パートナーや友人に支えられて暮らすなど、希望も描かれている。<宗教を離れても生きていける 神の子ではないただの私を 世界はちゃんと受け入れてくれたから>

 漫画は元々、ある出版社のウェブメディア上で連載されていた。しかし宗教団体からの抗議で公開停止に。出版社は宗教ではなく親との葛藤を中心に描くなど代替案を菊池さんに打診。しかし菊池さんは「ただの『毒親』の話にしたら、親を追い詰めた組織の問題をうやむやにしてしまう」と断った。結果、連載は今年3月、打ち切りに。

 「宗教2世はずっと『いないもの』とされ、傷ついてきたんです。声を上げても誰も聞いてくれなかった。…

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【宗教と子ども】

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