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東京・明治神宮外苑の再開発計画が環境に与える影響に懸念の声が広がっている。樹木の大量伐採が予定され、名物のイチョウ並木の保全にも不安があるためだ。
オリンピック開催の準備と並行して、明治神宮や大手不動産会社などが、計画作りを進めてきた。具体的データの多くは最近になって示され、なお不明点が多い。環境へのダメージを減らす方策が十分検討されたのか、疑問だ。
神宮外苑は国民の献木などで整備され、戦前は国が管理した。明治神宮などが所有する。巨木も多く、公共性の高い緑地だ。
再開発は、老朽化した神宮球場と秩父宮ラグビー場を建て替え、再配置する。高層ビル3棟が建設され、景観や環境は一変する。東京都は3月に再開発の都市計画を決定しており、事業者側は2036年の完成を見込む。
樹齢100年超の巨木を含む樹木が大量に伐採されるため、反対署名などが起きている。事業者側は971本の伐採予定を4割削減するとの「見直し案」を今夏、公表した。だが、当初から個別の樹木データは開示されていない。
しかも、苑内芝生広場で伐採予定の200本以上が見直し案には含まれていない。計画を問題視する石川幹子中央大学研究開発機構・機構教授(都市環境学)はこの案でも、合計で約900本が伐採の危機にあると指摘する。
イチョウ並木は伐採の対象外だ。だが、新神宮球場は深さ40メートルまで、くいを打ち込んで建設される。並木との間隔が最短で約8メートルしかないことが今春、判明した。
かつて新宿御苑に地下トンネルを整備した際、10メートル以内にあった木は大部分が枯れた。事業者側が保全を強調するのなら、納得できるデータや対策を示すべきだ。
都の環境影響評価審議会はおおむね計画を了承したが、着工前に環境への影響を再点検する異例の展開となった。都民と十分に情報が共有されてこなかった計画である。都は見直しを主導すべきだ。
文化遺産の保護に携わるNGO「日本イコモス」が、環境への打撃を回避できる代替案を公表するなどの動きもある。
いったん立ち止まり、多様な声に耳を傾ける必要がある。都市環境と開発を考える契機としたい。