「まるで時限爆弾」 また暴言で引退、明石市長はなぜキレる?

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記者会見で辞職を表明し、涙をぬぐう泉房穂・明石市長=兵庫県明石市で2019年2月1日午後2時半、小松雄介撮影
記者会見で辞職を表明し、涙をぬぐう泉房穂・明石市長=兵庫県明石市で2019年2月1日午後2時半、小松雄介撮影

 「問責決議に賛成したら許さん」「次の選挙で絶対落としてやる」――。市議らに威圧的発言を浴びせた責任を取るとして、兵庫県明石市の泉房穂(ふさほ)市長(59)が10月中旬、今期限りで政治家をやめると表明した。「積もり積もった怒りが爆発した」といい、手厚い子育て支援策など11年以上の市長としてのキャリアが一瞬で吹き飛んだ。泉氏はなぜこうもキレるのか。関係者の証言から、そのパーソナリティーを探った。

 暴言があったのは10月8日。泉氏の母校、明石市立二見小学校で創立150周年記念式典があり、会場の体育館には約100人が集まっていた。

 関係者によると、受け付けを済ませた泉氏は来賓席に向かう途中で公明党の女性市議を見つけ、おもむろに顔を近づけた。「お前、(問責決議案に)賛成するなら許さんからな」。低い声で3回繰り返した。着席すると、隣にいた自民党会派所属の市議会議長にもすごんだ。「問責なんて出しやがって、ふざけんなよ。次の選挙で絶対に落としてやる」。あまりに険悪な雰囲気で、周囲は慌てて止めに入ったという。

怒りの導火線

 問責決議案はその2日前、自民や公明の市議ら13人が出していた。「自己の主観で物事を決めて、自分と相反する意見を排除する姿勢が見られる」などと猛省を促す内容。背景には、泉氏が特定企業の課税データをツイッターに投稿した問題などがあった。

 「ゼロってなんだかなぁ」。泉氏は2022年2月、明石市内に工場を持つ企業の課税額が載った書面を示し、そうツイートした。後に削除されたが、市議会では批判が渦巻いた。調査特別委員会(百条委員会)は6月、「秘密の漏えいに当たる疑いが強い」とする報告書を可決。一部の市議は8月、地方税法違反の疑いで神戸地検に告発状を提出するなど、泉氏は追い詰められていた。

「私の後ろには市民がいる」

 泉氏は市議会に強い権力基盤を持たない。実家は明石市で代々続く漁師。NHK勤務や議員秘書を経て弁護士になり、衆院議員を1期務めた後、11年の明石市長選に無所属で出馬した。自民など議会の多数派が推した候補を僅差で破った経緯もあり、市長就任後は人事や事業を巡って議会との対立が続いた。

 「私は提案する人。議員さんは決める人。アカンかったら反対してもらって構わない」。泉氏の口癖だ…

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