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フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズが先週から始まりました。得点や順位など結果に目が向きがちですが、数分間のプログラムに選手たちが歩んできた過程や込めた思いを感じることができるのもこの競技の魅力です。超人のような演技を繰り出すトップ選手も私たちと同じように悩みを抱えています。米マサチューセッツ州ノーウッドで21~23日に開かれた第1戦、スケートアメリカより、逆境を乗り越えた、ある女子選手の物語をお届けします。【東京運動部・倉沢仁志】
ひときわ大きな歓声がリンクに降り注いでいるのが映像越しに分かった。元気そうな姿で滑る彼女の演技を東京から見つめ、私はその光景に胸が熱くなった。
グレーシー・ゴールド選手(米国)、27歳。若年齢化が著しいフィギュアスケートの女子ではベテランの域に入る。
米国はフィギュア大国と呼ばれるが、女子は2002年ソルトレークシティー・オリンピックを最後に五輪での金メダルから遠ざかっている。ゴールド選手は14年ソチ五輪に臨むシーズンに当時18歳で全米選手権を制した。おのずと期待の声は高まった。あどけなさの残る屈託のない笑顔とは対照的に気品をまとった滑りは、たちまち国内外の注目の的となった。
結果は、ソチ五輪で初採用された団体で銅メダルに貢献したものの、個人では4位入賞でメダルに届かなかった。十分な活躍に映るが、何しろ期待が大きすぎた。
続く18年平昌五輪に向けても重圧はつきまとう。「完璧主義者」を自任していたゴールド選手は、徐々にメンタルヘルス(心の健康)の不調に苦しむようになった。17~18年シーズンは大会から離れ、平昌五輪の出場を断念した。
19年に…
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