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記者会見が映す「国」 「事実」をめぐる応酬の場であれ=金平茂紀

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 テレビ報道の仕事に長年携わってきた僕からすると、記者会見のありようによって、その国がどんな状態かがわかるような気がする。独裁国や戦時中の国の記者会見ほど不快なものはない。発信する側と、質問して問いただす側との緊張関係を欠いた会見なんか、ない方がいい。

 僕がよく覚えているのは、1972年の佐藤栄作首相の退任記者会見だ。新聞を公然と侮辱する発言をした佐藤氏に記者団が「撤回しろ」と迫って大げんかになり、結局、記者団が退席するという前代未聞のことが起きた。近年では米トランプ政権時代に、トランプ氏の移民政策を鋭く追及したCNNの記者に対してトランプ氏が激怒。会見場でマイクを取り上げようとし、さらに記者証を没収したが、全米メディアが抗議してこれを撤回させた。

 91年にソ連で保守派がクーデターを起こした時、大統領代行に就任したヤナーエフ副大統領に対して、最初の記者会見でヨイショ質問をした御用記者がいたことも忘れられない。保守派に軟禁されたゴルバチョフ大統領の生死が不明で、世界中が固唾(かたず)をのんでいた時期だというのに。そういう記者がこの世にはいるものだ。

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