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本村凌二・評 『ラヴェンナ ヨーロッパを生んだ帝都の歴史』=ジュディス・ヘリン著、井上浩一・訳

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 (白水社・9570円)

欧州の祖母と欧州の父、しみじみと

 なんとも静寂な風情がただよう。北イタリアのアドリア海湾奥にあるラヴェンナは中心街に五~七世紀の由緒ある建築物が集中する。ここを「訪れたことがない者は、驚きに満ちた体験、素晴らしい喜びを味わい損ねている」と著者は語る。

 ラヴェンナが歴史の表舞台に登場するのは四〇二年のこと。四世紀末、東西に分割されたローマ帝国の西方世界の帝都となり、皇帝と宮廷が迎えられた。ホノリウス帝の異母妹ガッラ・プラキディアもこの地に移住したが、帝権争いにまきこまれ、数年間コンスタンティノープル(現イスタンブール)に亡命する。やがて幼い息子ウァレンティアヌスの帝位就任とともにラヴェンナに戻った。

 その後の四半世紀、プラキディアは皇太后として宮廷の中心にあり権勢をふるった。彼女の霊廟(れいびょう)は「まばゆい星空と紺や金色の装飾」に輝き、初期キリスト教芸術の比類なき作品である。この地にあって、帝国支配の基盤となるゴート人とローマ人の融合が実現し、西方の都における帝権と教権との協同体制が築かれたのである。

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