「老後の年金もらえますか?」 モヤモヤを若手研究者にぶつけた

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マスク姿で通勤する人たち=JR東京駅前で2022年1月、手塚耕一郎撮影
マスク姿で通勤する人たち=JR東京駅前で2022年1月、手塚耕一郎撮影

 公的年金制度に対する若者世代の不信感が消えない中、年金改革を議論する厚生労働省年金部会の有識者メンバーに、30代の若手研究者が加わった。大和総研主任研究員の是枝俊悟さん(36)だ。「若者は将来、年金を受け取れますか?」。社会保障の「支え手」の一人でもある是枝さんに、年金の疑問をぶつけた。【聞き手・石田奈津子】

年金制度 作るのは私たち

 ――若者の中には、保険料を支払っても自分は将来年金を受け取れないと思っている人も多いようです。

 ◆年金制度が破綻したり、年金をまったく受け取れなかったりすることはありません。年金は、現在の現役世代の保険料を高齢者の年金に充てる世代間の「仕送り」で運用されており、「賦課方式」といいます。2021年の合計特殊出生率は下がったとはいえ1・30あります。下の世代にも子どもがいるので、自分が高齢になった時に支えてくれる人はいます。過度に悲観的にならないことが大事だと思います。

 一方、悪い話ばかりではありません。私たちの世代では子どもを持っても正規雇用で働き続ける女性が増えてきています。この傾向が、自分の後輩や子どもたちの世代でも続けば、納付される保険料が増えて、私たちの年金を増やす方向に働きます。

 ――年金がもらえても、少ないのではないかとの不安があります。

 ◆年金とは、現役時代に自分たちが残してきたものの「結果」です。自分たちの世代が子どもを産み、育てやすい社会を作ってきたのか、女性や高齢者も働きやすい社会を作ってきたのか――。その結果で、自分たちの世代が受け取れる年金の水準がおおむね決まります。よく戦後のベビーブーム生まれの「団塊の世代」は「年金逃げ切り世代」などと言われますが、団塊の世代は平均して2人ぐらいの子どもを残してきました。今の20代や30代が老後にどのくらいの年金を受け取れるかは、これからの私たち次第です。

 また現役世代からみると、年金保険料を支払う負担だけに目が行きがちですが、自分たちの親は年金で生活を支えられているわけです。働けなくなった高齢者を家族が支えるのではなく、社会保障制度として支える。公的年金はその基盤になっています。

高齢になっても働ける基盤作りを

 ――支え手が減る中、どのような改革が必要なのでしょうか。

 ◆19年の財政検証(おおむね5年に1回、政府が年金財政の健全性を調べる仕組み)では試算の一つとして、国民年金(基礎年金)の保険料納付期間を5年延ばす案が厚労省から示されました。現状は国民年金の納付期間は20歳以上60歳未満の40年間ですが、20歳以上65歳未満の45年間に延長する案の是非について今後、年金部会で議論されます。

 ――国民年金加入者の反発も予想されそうです。

 ◆現在、60代前半の男性は8割以上、女性も6割ほどが働いています。もちろん健康上の理由で働けない高齢者はいますが、一般的には「元気な高齢者」が増える中、60歳から64歳の期間に保険料を納めるのが本当に難しいのか考えてほしいと思います。今より追加で5年分払うことに反対意見もあると思いますが、これは今の高齢者を支えるために支払うのではなく、65歳まで働く社会の基盤を作るということだと理解してほしいと思います。65歳まで働いて保険料を納付する社会を作れば、下の世代もそれを受け継ぎ、自分たちが受け取る給付も増えるのです。

 ――給付が増えれば新たな財源が必要になります。大丈夫ですか。

 ◆現在、基礎年金の財源の2分の1は国庫負担です。国庫負担を2分の1としたまま5年延長する場合には、保険料のほかに新たに1兆円強の財源が必要となります。実は基礎年金の国庫負担は、以前は3分の1でした。それを2分の1に引き上げる際には消費税を上げないとできませんでした。税財源を投入するのは簡単な話ではありません。財源をどこに求めるのか国民の議論を深める必要があります。5年間の納付期間が増えれば、給付額は増えます。ただ、そのための財源を十分得られないのであれば、給付額の増加はより小幅にならざるを得ないでしょう。「延長5年分の給付は国庫で負担しない」という選択肢もあり得ます。

 インタビュー後半では、「専業主婦家庭」が前提となっている年金制度の課題などを聞きました。

基礎年金への財政調整 国民的議論を

 ――今後の年金部会では国民年金の受給額の底上げのため、納付期間延長以外の方策も議論されます。具体的にどういうことでしょうか。

 ◆04年…

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