「どうぶつ弁護団」発足 弁護士と獣医師がタッグ、虐待告発へ

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大阪府内で虐待された後、やけどの治療を受ける猫=関係者提供 拡大
大阪府内で虐待された後、やけどの治療を受ける猫=関係者提供

 ペットブームの陰で後を絶たない虐待を弁護士と獣医師が独自に調査し刑事告発するNPO法人「どうぶつ弁護団」が兵庫県内で発足した。動物虐待の摘発件数は急増しているが、量刑の「相場」は少額の罰金で、不起訴となることも多い。「弁護団」は検察審査会に申し立てて刑事処分まで追いかける方針で、全国の弁護士から協力の申し出があるという。

 「弁護団」は県弁護士会と神戸市獣医師会の有志らで構成。虐待告発を目的にした法律と獣医学の専門家集団は全国で初めてという。日本法獣医学会に所属し、警察から相談のあった約300件のカルテを蓄積する獣医師もおり、証拠固めを支援する。

軽い罰金10万円 「20年前の感覚」

動物虐待事件の摘発件数 拡大
動物虐待事件の摘発件数

 警察庁によると、動物虐待の全国の摘発件数は2021年に過去最多の170件となった。社会的関心の高まりや法改正の影響があるとみられる。だが、逮捕や書類送検されても不起訴や軽い処分に終わるケースも多い。

 動物愛護法では、殺傷は懲役5年以下か罰金500万円以下となる。21年には大阪府内で飼い猫にエタノールをかけて火を付け、全身にやけどをさせた事件が不起訴(起訴猶予)になった。検審が起訴相当と議決し、略式起訴されたが処分は罰金10万円だった。

 法務省の統計では21年の動物愛護法違反事件(虐待以外も含む)で起訴されたのは71人。9割は罰金100万円以下の略式起訴だった。108人は容疑が明白だが訴追しない起訴猶予、82人は証拠不十分で不起訴となった。同法は00年以降、虐待の罰則が4回引き上げられたが、弁護団理事長の細川敦史弁護士(46)は「罰金は10万~20万円と下限に張り付いている。20年前と同じ感覚だ」と憤る。

悪質業者への対応、行政機関の対応も課題

動物虐待について議論する「どうぶつ弁護団」の細川敦史弁護士(右から2人目)や中島克元・神戸市獣医師会長(右)ら=神戸市で2022年10月26日午後5時52分、井上元宏撮影 拡大
動物虐待について議論する「どうぶつ弁護団」の細川敦史弁護士(右から2人目)や中島克元・神戸市獣医師会長(右)ら=神戸市で2022年10月26日午後5時52分、井上元宏撮影

 悪質な繁殖業者(ブリーダー)に改善命令を出そうとしない保健所など行政機関の対応も課題となる。

 細川弁護士が告発に関わった長野県松本市の業者の男性は、約450匹の犬を虐待し、出産時に無資格で麻酔を使わず腹部を切開したとして、同法違反罪などで起訴された。犬は4段積み重ねたケージに入れられ、排せつ物もたまるような状態。中には失明した犬もいたという。

 保健所は5年間で9回立ち入り検査をしたが、改善命令は出さなかった。業者の男性が21年11月に逮捕されたのは、動物愛護団体による通報・刑事告発などがあったからだ。

不起訴なら検審に申し立ても

 動物虐待防止への関心は高まっている。法改正で虐待が疑われる動物を診察した獣医師に関係機関へ通報する義務が定められている。環境省は21年6月に飼育ケージの大きさや必要な人員などの基準を定め、22年3月にはどういう事案が動物虐待にあたるかをガイドラインにまとめた。9月のNPO設立後、東京や名古屋で動物の福祉や環境問題に関心を持つ弁護士たちから問い合わせが増えているという。

 「弁護団」は情報提供者から金銭をもらわず独自に調査し、証拠を集めて刑事告発する。不起訴の場合は検審に不服申し立てする。10月下旬の理事会では「新型コロナウイルス禍のペットブームが過ぎれば値下がりして(悪質ブリーダーの多頭飼育崩壊など)虐待が増えるのでは」と懸念する声が出た。

 近くホームページをつくり、賛助会員(年間5000円)を募る。理事で神戸市獣医師会の中島克元会長は「虐待は我々の敵。近畿一円の獣医師会でバックアップしたい」と強調する。細川理事長は「各地の弁護士とのネットワークを広げ、動物虐待の防止につなげたい」と話している。【井上元宏】

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