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大阪急性期・総合医療センター(大阪市住吉区、病床数865)で、「ランサムウエア」(身代金ウイルス)によるサイバー攻撃の影響が続いている。電子カルテシステムに障害が生じ、全面復旧は2023年1月までかかるという。なぜ病院がターゲットになったのか。背景を探った。
9日、センターの入り口には「システム障害が発生し、通常診療ができない状況となっています」といった張り紙が張られていた。予約していた定期検診を受けに来た70代女性は「問診などが手書きだったので、かなり時間がかかった。医師や看護師も大変そうだし、少しでも早く復旧してほしい」と願った。検査を受けた別の女性も、システム障害のため心電図検査は別の病院で受けざるを得ず、「基幹病院にこういった攻撃をするのは許せない」と憤った。センターの外来診療は障害発生以降、新規受け付けを停止している。
異変が起きたのは10月31日。患者の電子カルテが閲覧できなくなり、サーバー上に「全てのファイルは暗号化された。復元したければビットコインで支払え」と「身代金」を要求するメッセージが英語で記されていた。ランサムウエアによる攻撃で、政府が派遣した専門家チームの調査では、サイバー犯罪集団「フォボス」が関与した可能性があるという。
センターは支払いには応じない方針だが、電子カルテの使用や診療報酬の計算ができなくなり、外来診療や救急患者の受け入れをストップ。救急医療は周辺の医療機関に依頼した。入院患者には新たに紙のカルテを作って対応しているが、過去のカルテを見られないと診療や手術の質が落ちる恐れがある。
ランサムウエア被害、今年急増
ランサムウエアによる病院の被害は頻発している。21年には徳島県つるぎ町立半田病院でも発生し、全診療科の診察再開まで約2カ月を要した。警察庁によると、22年上半期(1~6月)に病院から寄せられた被害相談件数は5件。21年1年間の件数(5件)と既に並んでいる。
なぜ病院が狙われるのか。医療分野のサイバーセキュリティーに詳しい愛知医科大病院の深津博・医療情報部長は「…
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