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「無視じゃないのに…」 片耳難聴の“あるある”を動画で配信

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ショートムービーのワンシーン。同僚(左)と打ち合わせ中、上司(右奥)から話しかけられるが、その声に気づかない=きこいろ提供 拡大
ショートムービーのワンシーン。同僚(左)と打ち合わせ中、上司(右奥)から話しかけられるが、その声に気づかない=きこいろ提供

 片耳が聞こえにくいか、聞こえない「片耳難聴」。もう片方の耳が聞こえることから、周囲に気づかれにくい。でも、環境によっては音が聞き取りづらく、「無視している」などと誤解されるケースもある。こうした摩擦を減らそうと、当事者でつくる市民団体「きこいろ」(岡野由実代表)が情報発信に取り組んでいる。【大野友嘉子】

周囲は気づきにくく、しばしば誤解

 「片耳難聴の実情を広く知ってほしい」。そんな思いから、本紙の情報提供窓口「つながる毎日新聞」に情報を寄せた「きこいろ」。今年10月、約12分のショートムービー「聞こえ方は、いろいろ。~ある日、片耳が聞こえなくなって~」をインターネット上(https://www.youtube.com/watch?v=lBper3_cZlM)で公開したという。

 「え、久保さん、(電話)切っちゃった? 僕も佐藤くんに用事があったのに……」。ドラマ仕立ての動画の中で女性会社員の久保さんに、上司は思わずこう言い放つ。

 上司は久保さんの右隣の部屋から電話を代わるよう声を掛けていたが、久保さんは電話を切ってしまった。受話器を当てていなかった左耳は突発性難聴で、その声は聞こえていなかったのだ。

 「すいません」と謝る久保さんに、上司は「ああ、大丈夫。いいよ、かけ直すから」。気まずい雰囲気がオフィスに漂う……。

 日ごろは他の社員と同じように会話し、補聴器をつけているわけでもないことから、職場でのこうしたすれ違いはしばしば起きているという。

オンライン取材に応じる河中俊樹さん=2022年10月31日 拡大
オンライン取材に応じる河中俊樹さん=2022年10月31日

 きこいろの広報担当で、企画・デザイン会社を経営する河中俊樹さん(55)は、片耳難聴者が直面する「あるある」を分かりやすく伝えるため、登場人物の属性にこだわったと説明する。

 久保さんは30代前半の「そこそこのキャリアがある中堅どころ」。片耳難聴になったのは最近という設定だ。

 河中さんは「久保さんは、重要な仕事を任されると同時に、上司や同僚とのコミュニケーションに気を配る立場でもあり、そんな中で難聴との付き合い方に試行錯誤します。当事者の共感を得られるようにしました」と話す。

 一方で「(片耳難聴の人が)かわいそうだと同情をされるような描き方は避けました。あくまで、職場で起こりがちな『困りごと』を知ってもらうことが狙いです」と語った。

聞こえづらい環境がある

 久保さんのように、一見すると普通に会話をしていることから問題なく生活していると思われがちだが、環境によっては片方の耳だけで音を拾うのが難しい場面がある。

 岡野代表は「難聴の耳の方から話しかけられる場合や、騒がしい場所にいると聞き取りにくくなります。また、音が聞こえても、どこからその音がしているのかが分からない場合もあります」と話す。

 また、当事者自身が認識していないケースもあるという。

オンライン取材に応じる日置勇樹さん=2022年10月31日 拡大
オンライン取材に応じる日置勇樹さん=2022年10月31日

 運営メンバーの一人で、公認会計士の日置勇樹さん(27)は、生まれつき右耳が聞こえない。友人から「聞き返すことが多いね」と指摘されることはあったが、あまり気にしていなかった。「大学時代、後輩に『無視しないでくださいよ』と言われ、聞こえていないことがあるんだと自覚しました」と話す。

 以来、必要に応じて聞こえづらいことがあると周囲に伝えるようになった。

 「例えば、一回きりの会議で(出席者に)片耳難聴だと言うことはあまりしません。でも、同じメンバーで何度か会議をすることが分かっている場合は言っておいた方がいいだろうなどと、その都度判断しています。上座、下座で座る場所が決まっている時などは、知っておいてもらった方がいいこともあります」

 河中さんは、左耳が聞こえない。片耳難聴と分かったのは、小学校に入学する前に受けた就学時健診。友人とのやり取りで戸惑うことがよくあったと振り返る。

 「左側から話しかけられて反応しないと、『無視された』と言われることがありました。そのため、左側にいる人の表情をじっと見るようにすると、今度は『にらんだ』となってしまいました」

オンライン取材に応じる「きこいろ」の岡野由実代表=2022年10月31日 拡大
オンライン取材に応じる「きこいろ」の岡野由実代表=2022年10月31日

 子どもの頃は片耳難聴だと積極的には周囲に言わなかったが、社会人になってからは同僚などに伝えるようにしているという。

 岡野代表は「一人一人の理解と、ちょっとした配慮で(片耳難聴の当事者は)生活しやすくなります。ショートムービーをはじめ、私たちの活動を少しでも多くの人に知ってもらいたいと思います」と話している。

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