アントニオ猪木さんが最期に闘った「最強の敵」

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赤いマフラー姿でポーズを取るアントニオ猪木さん=東京都武蔵野市で2019年9月2日、佐々木順一撮影
赤いマフラー姿でポーズを取るアントニオ猪木さん=東京都武蔵野市で2019年9月2日、佐々木順一撮影

 10月に79歳で亡くなったプロレスラーのアントニオ猪木さんが病床で闘っていたのは、「全身性アミロイドーシス」という疾患だ。異常を起こした体内のたんぱく質が臓器などの機能を奪う病気で、国の難病に指定されているが高齢化の進展とともに増えつつあるという。自らの闘病生活について「最強の敵と闘っています」と語っていた猪木さん。どのような病気なのか。

体にたまる「ナイロンのごみ」

 アミロイドーシスとは、アミロイドと呼ばれる線維状のたんぱく質が、全身のさまざまな臓器に沈着し、体の異常を起こす病気だ。正常なたんぱく質が何らかの原因で複雑にからみ合い、水に溶けにくい「ごみ」となって体にたまるが、詳細なメカニズムは分かっていない。アミロイドは分子構造がナイロンと似ていることから、「ナイロン蓄積病」と呼ばれることもある。例えるなら、からみ合ったナイロン製の漁網が体の中にたまっていく、といったイメージだ。

 「全身性」の症状は、心不全のほか、ネフローゼ症候群や腎不全、胃腸の障害、関節や腱(けん)、末梢(まっしょう)神経や自律神経の障害などさまざまに及ぶ。舌や甲状腺、肝臓が腫れることもある。

 「少し耳が聞こえなくなって病院にかかったんです。いろいろな検査をしてもらい、心アミロイドーシスという難病にかかっていることが判明しました」。猪木さんは2020年夏、ネット交流サービス(SNS)に投稿した。「全身性」の症状の一環として心臓に表れるのが「心アミロイドーシス」だ。心臓にアミロイドが沈着して心臓の機能に障害を起こす症状がある。プロ野球の中日や阪神などで活躍し、楽天の初代監督を務めた野球評論家の田尾安志さん(68)も心アミロイドーシスにかかったことを公表している。

 全身性などの治療には、19年に保険適用された「タファミジス」(商品名ビンダケル)という新薬が使われており、猪木さんも服用していたとみられる。たんぱく質がアミロイドになるのを防ぎ、症状の進行を遅らせる効果が期待されるが、1錠(20ミリグラム)は約9700円と高額だ。

老化の進展と密接な関係

 正常なたんぱく質が、なぜ「ごみ」になるのか。国際アミロイドーシス学会理事長などを歴任した長崎国際大薬学部の安東由喜雄教授は「老化の進展と密接に関わっている可能性がある」と指摘する。…

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