連載

指先のエロス

全盲の落語家・桂福点さんが、魅惑の世界を「指先」案内します。

連載一覧

指先のエロス

彫刻に命宿す美術館 自由に踏みしめ、触る楽園=桂福点

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
=イラスト・まどさん
=イラスト・まどさん

 壁にかけられた額縁、それは窓である。時に緑の息遣いを運ぶ初夏の風景であり、時に金色の大地で働く農夫を映す。そんな窓の風景に吸い込まれ、はたと気づくと、恍惚(こうこつ)として一人たたずむ自分がいたという経験をしたことはないだろうか。

 私は絵が好きだった。絵を見てその中に吸い込まれる無意識と意識のはざまを楽しんでいた。この喜びは失明と共に奪われたはずだった。

 初秋のある日、静岡県にあるクレマチスの丘・ヴァンジ彫刻庭園美術館に私はいた。左右の手を広げ、柔らかな芝生を踏みしめ、地面の反発を楽しんだ。舞い飛ぶチョウのように楽園を自由に移動した。

この記事は有料記事です。

残り1340文字(全文1611文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集