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日本の東南アジア外交 対等なパートナーとして

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 東南アジア諸国連合(ASEAN)を米中の覇権争いの場にしてはならない。そのための外交力を日本は発揮する責任がある。

 ASEANを舞台にした一連の国際会議が始まった。カンボジアでASEAN関連、インドネシアで主要20カ国・地域(G20)、タイでアジア太平洋経済協力会議(APEC)の各首脳会議が開かれる。岸田文雄首相のほか、バイデン米大統領、中国の習近平国家主席らが一堂に会する予定だ。

 ASEAN首脳会議では、東ティモールの加盟を認めることで一致した。加盟国拡大の背景には、存在感を高める狙いがある。

 日本はここ数年、法の支配などの普及を目指す「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を推進し、日米豪印の協力を強化してきた。中国の影響力拡大に対抗することを意識している。

 一方、ASEANは中国への経済的依存を強めながらも、米中のはざまで二者択一を迫られることへの警戒感を抱く。2019年には、海洋協力や経済開発などの指針「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」を採択した。

 日ASEANの二つの構想の相乗効果を引き出し、中国とも調整しながら、安定した地域秩序作りに生かすことが肝要だ。

 ただ、ASEANを取り巻く環境は厳しい。ミャンマーで昨年2月、軍事クーデターが起きるなど、民主化の動きは後退している。地域の緊張を背景に、軍拡競争も起きている。

 ASEANは一体性を重視し、地域協力の枠組みの中で中心的役割を果たすことを目指してきた。だが、中国との政治・経済面での距離感をめぐり、域内の分断を懸念する声もある。

 経済発展したASEANにとって、日本は今や「対等なパートナー」と言っていい。中国の台頭で存在感は相対的に低下しているとはいえ、依然として日本への期待は大きい。来年12月には友好協力50周年を記念して、東京で特別首脳会議が予定されている。

 ASEANとの関係をより強固にすることが、インド太平洋地域の平和と安定にもつながるだろう。日本は対ASEAN外交の取り組みを強化すべきだ。

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