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葉梨法相が辞任 首相のお粗末な危機対応

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参院本会議で答弁を終え、一礼する葉梨康弘法相(右)。左は岸田文雄首相=国会内で2022年11月11日午前11時8分、竹内幹撮影 拡大
参院本会議で答弁を終え、一礼する葉梨康弘法相(右)。左は岸田文雄首相=国会内で2022年11月11日午前11時8分、竹内幹撮影

 問題の重大性を認識していなかったのか。後手に回った岸田文雄首相の危機対応は、お粗末と言うほかない。

 葉梨康弘法相が辞任した。自らが執行を命じる死刑を軽々しく扱う発言をし、批判を浴びていた。

 先月下旬に経済再生担当相を更迭された山際大志郎氏に続く「辞任ドミノ」は、政権に大きな打撃となる。

 理解できないのは首相が当初、葉梨氏を厳重注意にとどめ、続投させようとしたことだ。葉梨氏は岸田派の所属で、進退は首相の意向次第で決められたはずだ。

 問題発言の翌日には「職責の重さをしっかりと感じ、説明責任を果たしてもらいたい」と述べていた。きのうの午前の国会答弁でも、野党の更迭要求をかわした。

 ところが、自民党内でも「更迭すべきだ」との声が高まり、結局、辞任に追い込まれた。

 有罪が確定した人の命を国家が奪うのが死刑である。法相として職責の重みを自覚していたとは思えない。

 さらに世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題の担当閣僚の一人であるにもかかわらず、「旧統一教会問題に抱きつかれてしまった」と人ごとのように語った。

 「法務大臣になってもお金は集まらない」と述べたことも、「政治とカネ」が問われる中で不見識極まりない。

 不祥事が起きても当事者任せの姿勢を続け、批判の広がりを前に慌てて対応する。そうした悪循環が今回も繰り返された。

 山際氏の更迭を巡って、決断力のなさと危機管理対応の拙さを批判されたばかりだが、教訓は生かされなかった。

 後任法相の人選のため、東南アジア訪問の出発を大幅に遅らせるほどの混乱ぶりだった。

 国会で追及されている閣僚は他にもいる。寺田稔総務相と秋葉賢也復興相は政治資金の扱いで野党から新たな事実を指摘されるたび、追認する発言を繰り返す。

 国政の停滞を招かないよう、閣内で問題が起きればすぐに対応するのが首相の責任だ。岸田氏が掲げる「決断と実行」はどこへ行ったのか。

 このような政権運営を続けては、山積する課題に対処できない。

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